龍は伝説の霊獣で、中国では皇帝のシンボルとして扱われてきました。 その啼き声によって雷雲や嵐を呼び、また竜巻となって天空に昇り自在に飛翔し、秋になると淵の中に潜み、春には天に昇るとも言われています。天に向かってゆく昇龍と、天から降りてくる降龍が縁起の良い絵柄として好まれます。龍は天に昇って宝珠を取ってくると言われることから、降龍は宝珠を持って描かれます。宝珠は、病を治したり、災いを避けたりすることができ、ありとあらゆる願いが叶う神聖な玉だと言われています。ペリカン蒔絵万年筆『龍』は研出蒔絵と高蒔絵を組合わせた研出高蒔絵の技法に、金、銀、螺鈿細工を駆使して降龍が鮮やかに描かれています。日本が誇る伝統芸術「蒔絵」とドイツ・ペリカン社のマイスタークラフトマンシップが見事に調和した作品です。
螺鈿細工は、夜光貝やアワビの真珠質の部分を砥石で磨き、一定の厚さに揃え、漆塗面に埋め込んだり、貼り付けたりする技法で、光の当たり具合によって、貝の部分が美しく光るのを利用した加飾法です。螺鈿限定万年筆「市松」は、オーストラリア産のアワビを用い、その緑の光沢が美しい部分を短冊状に切り、朱漆を万年筆に塗り込んだ後、一枚一枚手作業で丁寧にキャップと胴軸に貼り付けます。次に銀粉を万年筆全体に蒔き乾燥させ、貝の上に蒔かれた銀粉を丁寧に取り除き、ウレタン塗装を行い、乾燥後に数回研磨を行います。その後に仕上げ磨きを行い、作者名と限定番号を蒔絵の技法で描き込み、乾燥後に再度研磨を行い仕上げます。