
ペリカン蒔絵万年筆
蒔絵は漆器の表面に漆で絵柄を描き、その上に金粉、銀粉、プラチナ粉、螺鈿などを蒔きつけたもので、漆加飾法のなかでも最も芸術的で、その美しさは世界中に認められています。
ペリカン#1000に施された蒔絵は、高蒔絵と研出蒔絵を同時に用いた「肉合研出蒔絵」の技法を駆使して、四季の自然を表情豊かに描いています。
160余年の伝統と技術を誇るドイツペリカン社のクラフトマンシップと、日本が生み出した世界に誇る工芸技術が見事に調和した作品です。
桜花春蝶
金粉、銀粉、青金粉、白金粉を調和させて、桜と蝶により見事に春を描き出しています。

朝顔夏蛍
金地に螺鈿を用いた朝顔が生き生きと描かれ、葉に留まる二匹の蛍は夏の風情を一層引き立てています。

紅葉秋虫
彩り鮮やかな朱金による紅葉のあでやかさに、螺鈿を施した鈴虫が秋のはかなさを表現しています。

雪輪冬兎
梨地に白金粉と螺鈿を駆使した雪の結晶模様に戯れる白兎が、表情豊かに描かれています。

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by fullhalter
| 2001-01-13 13:16
| 限定品万年筆
――今5本のペンは、交替に使用して、なるべく均等に減るようにこころがけるのだが、それが同じようにはいかない。1本ずつ性格がある。それは、まるで人間を相手にしているようでもあるし、子供を育てているような気にもなる。 (1981年録)
私は二十数年作家の方々の万年筆に対する考え方に接してきた。
多くの作家の方々の中で、万年筆の本質については開高健さんと藤本義一さんが双璧ではないかと私は感じている。
同じメーカーの同じモデルの同じペン先の太さでも、それぞれ個性があり、同じではない。使い込んでゆけば同じ様になるかと言えばそうでもない。子どもが5人いて、同じ様に接し育てても、皆それぞれが違う個性を持ち、それぞれの魅力を持つ。
私は調整師であり、万年筆の使い手ではない。長く使い、言い換えれば、育ててゆくと、どの様な変化が起こるか、自分の手で実感することはむずかしい。私の仕事は生まれ出る時に少しでも親との相性が合うように、育てやすいようにすることだと思っている。
ただ、使い手つまりお客様との会話の中で、一本ずつ、かなり強い個性を持っているのが万年筆だと教えられてきた。それを蓄積して、今では偉そうに、万年筆とはなんぞやなどと言っている。使い手が職人を育て、職人が使い手を育てる関係、いいなと思う。
万年筆とはそれ自体が、かなり強い個性を持ち、藤本さんが言われる通り、子どもを育てるようなところがある。その日によって、同じ万年筆が従順な子どもの時もあれば、反抗的な子どもになる時もあることを、経験された方も居られるのではないか。
だから万年筆は楽しい。
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by fullhalter
| 2001-01-01 19:00
| 作家と万年筆
『クロスポイント』との出合いは、私の万年筆に対する思いを深くし、大きく拡げてくれた。
作り出されたのは、セーラー万年筆でこの道50年を超えられた長原宣義さんだ。私は、万年筆極太ペン先の究極であると思っている。
長原さんは、クロスポイントのみならず、素晴らしいアイディアを実現されている方だ。ひとつ例を上げると、ある画家のデッサン用のペン先を作ってあげたいと思っていた東京出張中の夜中に、フッとアイディアが浮び、そのまま朝までに仕上げてしまった。そのペン先は先端部分から3~4ミリのところから右に45°程度曲げて仕上げてあり、万年筆を左に回転させながら線を描くと、太さは、細く書けるところと太く書けるところの差が、10~20倍にもなっていた。日本橋のデパートから電話があり、「すごいものが出来たので、お前に見せたい。すぐに来い。」と言われたその時のペン先である。
これだけではない。セーラーのペンドクター長原さんは、使い手の用途により、ペン先の先端部分のみ上に曲げたり、下に曲げたりして仕上げ、これまで諦めるしかなかった個人の要望に応えておられる。今は京都洛西の煤竹で万年筆を作っておられるが、初期モデル(といっても2年前位であるが)は、ボディには何もつけていなかったが、次にはキャップと胴軸の互いに接する部分に金属をつけ、次は2色を絹糸を巻きその上に漆を塗った。更にそれらの頭と尻に螺鈿をつけ、最新作はその上に18金無垢の糸を巻き付けたものになった。
これらは、本道を極めた上での遊び心だと思う。遊び心は人生を豊かにしてくれるだろう。クロスポイントに話しを戻すと、形状は、極太として非常に理に適った素晴らしい形状で、インクの含みが多く、筆記角度の左右のねじれに対する書き出しインク切れの欠点をものの見事に解決したペン先である。
今通常の製品として販売されているもので、一番太いペン先は、ペリカン#1000、#800の3Bであろうが、このクロスポイントは、それらの二倍位の太さに書けるよう仕上げられる。以前有名俳優の方から太ければ太い程良いので何かないかと言われて仲介したのだが、おおいに満足していただいた。これから少しでも多くの方々に、世界中の万年筆好きの人たちににクロスポイントを試し、書き味を味わっていただきたい。きっと、万年筆の世界が拡がることと思う。
作り出されたのは、セーラー万年筆でこの道50年を超えられた長原宣義さんだ。私は、万年筆極太ペン先の究極であると思っている。
長原さんは、クロスポイントのみならず、素晴らしいアイディアを実現されている方だ。ひとつ例を上げると、ある画家のデッサン用のペン先を作ってあげたいと思っていた東京出張中の夜中に、フッとアイディアが浮び、そのまま朝までに仕上げてしまった。そのペン先は先端部分から3~4ミリのところから右に45°程度曲げて仕上げてあり、万年筆を左に回転させながら線を描くと、太さは、細く書けるところと太く書けるところの差が、10~20倍にもなっていた。日本橋のデパートから電話があり、「すごいものが出来たので、お前に見せたい。すぐに来い。」と言われたその時のペン先である。
これだけではない。セーラーのペンドクター長原さんは、使い手の用途により、ペン先の先端部分のみ上に曲げたり、下に曲げたりして仕上げ、これまで諦めるしかなかった個人の要望に応えておられる。今は京都洛西の煤竹で万年筆を作っておられるが、初期モデル(といっても2年前位であるが)は、ボディには何もつけていなかったが、次にはキャップと胴軸の互いに接する部分に金属をつけ、次は2色を絹糸を巻きその上に漆を塗った。更にそれらの頭と尻に螺鈿をつけ、最新作はその上に18金無垢の糸を巻き付けたものになった。
これらは、本道を極めた上での遊び心だと思う。遊び心は人生を豊かにしてくれるだろう。クロスポイントに話しを戻すと、形状は、極太として非常に理に適った素晴らしい形状で、インクの含みが多く、筆記角度の左右のねじれに対する書き出しインク切れの欠点をものの見事に解決したペン先である。
今通常の製品として販売されているもので、一番太いペン先は、ペリカン#1000、#800の3Bであろうが、このクロスポイントは、それらの二倍位の太さに書けるよう仕上げられる。以前有名俳優の方から太ければ太い程良いので何かないかと言われて仲介したのだが、おおいに満足していただいた。これから少しでも多くの方々に、世界中の万年筆好きの人たちににクロスポイントを試し、書き味を味わっていただきたい。きっと、万年筆の世界が拡がることと思う。
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by fullhalter
| 2001-01-01 18:58
| 私と万年筆
――私が万年筆を選ぶときは、「裁」という字を書いて選んでくるんです。この字だと、日本語に必要なほとんどの角度が出てくる。つまり、英語用の円運動の万年筆の場合、インクが出てこない角度がある。それで、おろしたときでも、筆記用具の調子を見るときは「裁」という字を書いてみるんです。
「永」という字が、日本語の筆順全部だと、永字八法なんて言いますけれど、私は「裁」の方がいろいろな角度があっていいと思います。 (1985年録)
万年筆好きの方には、試し書きする時の文字は“永”ということが、かなり浸透しているようだ。現に私の店でも、万年筆好きの方々が書き味のチェックをする時に、“永”の字で確認する方が少なくない。パイロットの総合カタログにも“永”の字が書かれている。
半村さんも長い万年筆使いの経験から“永”よりも“裁”の字の方が全ての方向を試すのにふさわしいとの結論を出されたのだと思う。
私自身、モンブラン在職中の内の約15年間は、何十万、何百万の入荷製品のライティングテストをしてきた。その方法は、ドイツモンブラン社も同じで、たて線・よこ線を書きそして8の字の連続筆記で合否を決定した。しかし8の字の連続筆記はその運筆が難しいので、慣れるまでには少々時間を要する。8の字の連続筆記が自然に出来るまでは、そのペン先の書き味がどうなのか正確にはつかめなかった。
つまりその万年筆の本当の書き味を確認するには、書き慣れた文字を書いてみないとわからないということである。“永”や“裁”は書き味の確認にはよい文字であるが、この文字で確認したい人は日頃から練習して書き慣れておくことだと思う。
一般的には自分の住所・氏名を何度も書いてみることが最良の方法ではないだろうか。
余談だが、以前人に聞いた話だと、半村さんは原稿書きには同じメーカーの同じモデルを使って居られるとのこと。従って同じモデルを何本もお求めになられ、買った時のキャップとボディが同じでなければいやだということでそれぞれに記号をつけており、その記号がA~Zまで行って、二巡目にまわってしまったとのこと。
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by fullhalter
| 2001-01-01 18:57
| 作家と万年筆
私がモンブランに入社した当時のペン先特にMは書きやすいものが多かった。
ボディの細いノブレスのMは、ウイングニブと呼ばれているタイプで、原型は1950年代のNo.252、1960年代のNo.12で、非常にきれいに研がれているものが多く、また書き味も柔らかくてなめらかだった。
それに比べBとかBBいわゆる極太のペン先は、ポイントの形状が四角で使うのにとても難しく、入社して3~4年経過した頃には、これらを何とかMをそのまま大きくしたような形状にして、もっと多くの人達に使ってもらえるようにできないかと考えるようになっていた。
丁度その頃に、創始者の二代目で社長であったMr.ヂャンボアと書き味についてディスカッションする機会を得た。
彼はその時、ニヤッと笑いながら、これはどうだとノブレスのNo.1147を私に手渡した。
この時のMr.ヂャンボアは、書きやすいというのはこういうペン先のことをいうのだとばかり、自信満々、勝ち誇ったような態度に見えた。
確かに試してみたら今までに経験のない書き味で驚かされた。
早速ルーペでニブポイントを見ると、なるほどと納得した。
もともとはBポイントのものを、すごくきれいなMをそのまま大きくした形状に研磨されており、自分の中でやっぱりこれだと確信した。
Mr.ヂャンボアに「これはスペシャルメイドだ。」と言うと、彼は「判ったか。」とまたニヤッと笑った。
これが森山モデルのヒントとなった。
それからBでもBBでも、両角を落としてMの形状をそのまま大きくした研ぎをしようと時間のある時に少しずつ練習を始めた。
そして、1984年に、ある作家にデパートでの展示会のために、自筆の原稿を借りた。
それからBでもBBでも、両角を落としてMの形状をそのまま大きくした研ぎをしようと時間のある時に少しずつ練習を始めた。
そして、1984年に、ある作家にデパートでの展示会のために、自筆の原稿を借りた。
その御礼として万年筆を一本差し上げることになり、その作家の筆記角度に合わせて、BをMタイプの形状に研いで渡した。
その礼状には「何たる書き味の良さでしょう!」と書かれてあり、やっぱりこの方法で良かったと確信した。
モンブランの一介の社員でありながら、モンブランのB、BBとして販売しているものを、まったく違う形状に変えてしまって良いものか、また気に入らなかったと言っても、元に戻すことは決して出来ないというプレッシャーから、実際にこの研磨は、自分のもの以外にはしたことがなかった。
その礼状には「何たる書き味の良さでしょう!」と書かれてあり、やっぱりこの方法で良かったと確信した。
モンブランの一介の社員でありながら、モンブランのB、BBとして販売しているものを、まったく違う形状に変えてしまって良いものか、また気に入らなかったと言っても、元に戻すことは決して出来ないというプレッシャーから、実際にこの研磨は、自分のもの以外にはしたことがなかった。
1984年の作家へのプレゼントから7年経過した1991年1月に、非常に親しくさせていただいていたお客様に、思い切ってBとBBをMタイプの形状に調整した私の万年筆を書いてもらった。
BBを書いた時のその人の反応をじっと見ていた私に、一寸間をおいて「まさにこれがヌラヌラですね。言葉では知っていたけれども、実際に書いた経験は初めてで、感動しました。」と言ってくれた。
ああよかった。
BBを書いた時のその人の反応をじっと見ていた私に、一寸間をおいて「まさにこれがヌラヌラですね。言葉では知っていたけれども、実際に書いた経験は初めてで、感動しました。」と言ってくれた。
ああよかった。
でもやっぱりという気持もあって、自信が持てた。
次は誰に試してもらおうかと思っている時に、No.149のBBばかり使っている若い人が来られた。
彼は生命保険会社の社員でありながら、フリーのライターもしていて、サンプルのBBを試したらぜひ自分のもこの調整をしてくれないかと依頼された。
この人が後に、いまは廃刊になった『 BTOOL 』という雑誌で、森山モデルと命名し紹介してくれたのである(1991年12月17日号第4巻16号<通巻56号>)。
1980年 Mr.ヂャンボアのNo.1147
1984年 作家の「何たる書き味の良さでしょう!」
1991年 森山モデル「まさにヌラヌラ」(1991年12月17日号第4巻16号<通巻56号>)
1994年 森山スペシャル『BTOOL』1994年8月18日号第6巻16号<通巻119号>
この人が後に、いまは廃刊になった『 BTOOL 』という雑誌で、森山モデルと命名し紹介してくれたのである(1991年12月17日号第4巻16号<通巻56号>)。
1980年 Mr.ヂャンボアのNo.1147
1984年 作家の「何たる書き味の良さでしょう!」
1991年 森山モデル「まさにヌラヌラ」(1991年12月17日号第4巻16号<通巻56号>)
1994年 森山スペシャル『BTOOL』1994年8月18日号第6巻16号<通巻119号>
長い時間を経て、日の目を見たのである。
ありがたいことに、万年筆好きの人だったら良く知っている鳥海忠さんが、『ホンモノ探し――人生が豊になる小道具』という本の中で、モンブラン146森山モデルとして8頁に渡って書いていただいている。
ありがたいことに、万年筆好きの人だったら良く知っている鳥海忠さんが、『ホンモノ探し――人生が豊になる小道具』という本の中で、モンブラン146森山モデルとして8頁に渡って書いていただいている。
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by fullhalter
| 2001-01-01 18:56
| 私と万年筆