フルハルター*心温まるモノ

セーラー万年筆株式会社創業90周年記念

  待ちに待った、セーラー90周年記念モデル「万年筆道楽」が発売される。 待ちに待った理由は、このホームページで何度かお伝えしたと思うが、ペン先は使えば使うほど、使い手に「なじむ」(熟成する)が、軸は使えば使うほど、劣化するものが多い。
  
  私は、ペン先同様、軸も使えば使うほど「なじむ」(熟成)ものが、万年筆にとっては最良だと思っている。熟成してくれる軸材としては、金、銀の無垢軸、蒔絵軸、木製軸など。 これらの中でも多くの人に熟成したと実感していただけるのが、木製軸ではないだろうか。 

  ブライヤー、黒柿、花梨、黒檀、屋久杉、楓、ペルナンブコ等々いろいろあるがそれらの中で、私が一番熟成してくれると思うのがブライヤーである。 すでにご存知の方も多いと思うが、ブライヤーを使っているものとしては、パイプがある。 パイプ愛好家はまず、木目、形の好きなものを選び、使いながら自分の手の脂を吸って深いツヤがすこしずつ出てくるのを楽しむ。

  ブライヤーの万年筆としては、同じセーラーの80周年記念モデルがあるが、これが神様と呼ばれている長原さんと私の深いおつきあいの始まりのモデルだったと思っている。確か、長原さんと3回目にお会いした日本橋高島屋のペンクリニックで、80周年記念ブライヤーモデルスペシャルバージョン「ブライヤーデスク」を見せていただいた。
  
  もともとこの80周年ブライヤーは、丁寧な5回の重ね塗りがされて非常に光沢があった。ただ私は、ブライヤーは長~い時間をかけ、自分の手の脂を吸わせて、素材の中から出てくる深いツヤを楽しむものと思っていた。 売り場で見せていただいたブライヤーデスクは、16本しか造らないものであり、5回の重ね塗りをわざわざ剥ぎ取ってあった。それを見せていただいた時、私は万年筆専門店の主であることを忘れ、ただの万年筆好きのオヤジになり、購入を即決してしまった。

  それ以後は、何とか80周年ブライヤー軸を捜していただき、仕入れ、多くのお客様に喜んでいただいた。 自分が好きなものをお客様に喜んでいただける、これは個人商店のオヤジの密かなそして大きな喜びである。90周年も、私個人の為に2種(2色)購入することは、すでに決めている。
  
  ブライヤー 貴方と共に歴史を刻む友として深い味わいが出てくる道具として是非一本。


万年筆道楽(ブラウン) 
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万年筆道楽(ダーク) 
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【 仕様 】
  セーラー万年筆株式会社創業90周年記念謹製万年筆 『万年筆道楽』
  価 格: 専用道具箱入り / 一本 94,500円(税4,500円)
  ペン先: 21金/長刀研ぎ(太字・中字)
  蓋・胴: ブライヤー(ブラウン・ダークの二色)
  道具箱: シリアルナンバー刻印入り特製桐箱(縦258×横73×高さ95mm)
  製造本数: 限定900本
 

【セーラー万年筆パンフレット】
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# by fullhalter | 2001-05-05 11:21 | 限定品万年筆

ペリカン・トレド 900/700

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トレドの由来は、スペイン中央部の都市で、ゴシックの大聖堂始め多くの教会や、神学校、そして歴史的な建築物も多い。16世紀の初め、カルロス5世がトレドを “日の沈むことなきスペイン帝国” の首都と定めて以来、幾世紀もの間トレドは宝飾細工の分野において、その比類のない精巧さでヨーロッパ中の羨望の地として、名声を欲しいままにしました。

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画家エルグレコも生涯を通じこよなく愛したこの地には、現在もなお幾多の歴史的芸術工芸品がその証として大切に保存されています。ペリカン・トレドの製作にあたっては、古くは刀剣産地として名声を博し、現在も金属手工芸品を生産する、このトレドの伝統的な精巧工芸技術の精神を取り入れています。

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925シルバーに24金張り 
上 M900 ビッグトレド プラチナ装飾18金ペン先 吸入式 
下 M700 トレド プラチナ装飾18金ペン先 吸入式 


このトレドは、手作業による彫金が施された芸術工芸品と呼べる。
万年筆のペン先は、使う程に使い手に馴染み、どんどん熟成する道具なのだが、トレドのボディはペン先と共に熟成してくれ何とも言えない味わいが出てくる。万年筆の軸としては、珍しいタイプと言える。

トレドの最大の特徴は、胴軸部分にスターリングシルバーを使用している為に、握った時の重心の位置が多くの使い手に合う。モンブランのソリテールと比較してみると、ソリテールは全てスターリングシルバーか、トレドと逆にキャップのみがスターリングシルバーである為、書く時に重心の位置が 後ろ(ペン先の反対側)になる為にかなり後ろを持って書く人でないとバランスがとても悪くなる。
私の経験からは、モンブラン ソリテールでバランス良く持って書ける人は、2%~3%なので、特別な方でないとお奨めできないが、トレドは、多くの人達にバランスが良いと感じて頂け、お奨め出来る。

これらトレドは万年筆としては、とても高価であるが、昨年の12月1日付で15%~20%価格が下がり、以前よりは、買いやすくなったのではないだろうか。
大きな記念の日に御主人に。あるいは自分自身へプレゼントに。

フルハルターのお客様で、お子さんが生まれた記念に財務大臣了解の上で、自分自身へのプレゼントにトレドを購入された方がおられる。今でも楽しい年賀状を頂いているのだが、その方は年賀状のお子さんの写真に矢印をつけ、「この子がペリカン トレドの子」と記されている。
私にとって、この上ない喜びの便りである。(2001-04-07)


価格
M700: 130,000円+税
M900: 190,000円+税
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# by fullhalter | 2001-04-07 11:01 | 限定品万年筆

第十二話 感謝をこめて…… 

  今日4月11日は私にとってとても重大な日。1977年の今日万年筆の世界(禁断の世界)に足を踏み込んでから、4半世紀の記念日である。このことは、<私と万年筆>の第2話「モンブランへの入社」ですでに述べているが、25年目の記念日に改めて申し上げたいと思う。

  1976年3月 当時勤めていたカメラメーカーを退職した。当時も今と変わらず職人仕事を好んでいた私は、革職人を目指し、その道のアルバイトをしてみたり、好きだった漆方面の面接を受けてみたりもしたが、いずれも成果が出ることは無かった。この30歳から31歳までの1年間、「仕事がしたい」という強い気持ち、30歳を過ぎて職が無い、今で言う「プータロー」のような暮らしにあせりを感じていた自分を振り返ると、よく1年間も耐えたものだと思う。しかしその1年間があったからこそ、私が最も愛する万年筆の世界に出会い、そして今、その世界で生きていくことが出来ているのだと思う。その喜びと感謝の気持ちが25年という歳月を過ぎた今日、私の胸を一杯にしている。

  25年前の今日、千葉県我孫子市の自宅を出て、当時のモンブラン日本総代理店ダイヤ産業がある浜松町世界貿易センター23Fに、やっと仕事が出来る喜びと少々の不安を持ちながら向かった朝を、昨日のことのように思い出す。

  ダイヤ産業から始まった万年筆稼業、サラリーマンで定年を静かに迎えればよいものを何を血迷ったか無謀にも1993年に万年筆専門店を開業してしまった。

  開業に当たり私は2つの柱を立てた。そのひとつは使う方に合わせて書き易くニブポイントを研ぎ出すオーダーメードの研磨をすること。もうひとつは「万年筆好きの方のためのサロン」として皆様に楽しんでいただける雰囲気のある専門店でありたいということ。いつからこんなに時の流れが早く、人が人らしく生きられなくなったのだろうかと感じていた私は、せめてフルハルターの店の中ではゆったりとした時間が流れて欲しいと願っていた。

  研磨の方は職人仕事ゆえ、今後も自らに磨きをかけ続けるしかない。けれど、「万年筆好きの方のためのサロン」と来店されるお客様に感じていただけているかどうか、気になるところだった。

  先日ご夫婦で来店された方が店の壁に掛けてある万年筆の絵を見て、「素敵な絵ですね」とおっしゃった。それらの絵は“4本のヘミングウェイ”の著者古山浩一氏の原画である。それらの絵やポスターが時の流れをゆったりと感じさせてくれているようで、「この扉のすぐ外は忙しい世界なのに、この中は全く別の世界のようだね 」と言われた。そして万年筆の話をして店を出る時、「そろそろ下界に戻るか」とおっしゃった。

  万年筆はゆったりとした時間の流れに合う道具で、それを扱う店もそうでありたいと願って開店したフルハルターである。この時、ようやくお客様にゆったりとした時間の流れる空間を感じていただけたと思い、嬉しかった。

  ご自身で「フルハルター北海道支部長兼極東支部長」と名乗っておられる方から最近こんなメールをいただいた。<世の中でもファーストフードからスローフードへという動きがみられます。能率重視、ファーストビジネスがよしとされる風潮のなか、フルハルターは、スロービジネス(こんな言葉でいいのでしょうか?)を邁進して頂きたいと思います。>

  おひとりおひとりに合わせて研ぎ出しをして販売するフルハルターは、絶対にファーストビジネスにはなれない。これからもスロービジネス、そして店の中ではゆっくりと穏やかな時間が流れるようでありたい。


  初心に返り、「さあ今日もフルハルターに出勤しよう」。
                                   2002年4月11日
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# by fullhalter | 2001-03-29 11:18 | 私と万年筆

ペリカン社限定品神話シリーズ「玄武」

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  古代中国の神話によると、天上には四方位に守り神があり、全ての生き物はその性質や特徴によってそれぞれの守り神に属していると言われています。四方位の守り神は「四神」と呼ばれ、東に青龍、西に白虎、南に朱雀、そして北に玄武と定められています。

  今回ペリカン社から、この四神の中でも北方の守護神である<玄武>をモチーフにした限定品をお届けします。玄武は亀に蛇が巻き付いた形をしており、勇猛で武術に優れ、天と地の間を往来し、万霊にあがめられ、妖を斬り、魔を除き、善人に健康と平和で清らかな家庭をもたらすと言われています。

  ペリカン社の熟練したマイスターの手により、925スターリングシルバーの軸の上に一本一本手作業により彫りこまれ、稀にみる芸術性と古代中国神話の融合という他に類を見ない芸術作品に仕上げられております。是非お手にとって見られて下さい。

  四神シリーズでは、既に三本が、ペリカン社から発売されています。下の写真は左から順に<青龍>(1995年)・<朱雀>(1996年)・<白虎>(2000年)。いずれも各888本限定製造されました。

  これら四つの守護神をうまく配置することにより、天地陰陽が調和され、福、富、健康がもたらされると信じられてきました。これらの考えは、現在でも風水学の基礎とされていますが、古くは軍隊戦術などにも取り入れられています。

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発売日:   2001年5月
インク機構: ピストン吸入式
製造数量:  888本(限定品の証として一本一本のクリップ上部に
             製造番号が刻印されています。)
付属品:   オリジナルボックス・限定ナンバー入り保証書
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# by fullhalter | 2001-03-24 09:48 | 限定品万年筆

0.9ミリシャープペンシル―モンブラン167

  私がここ十五年常用していたシャープペンシルはモンブラン75という型のものだ。芯の太さは0.9ミリである。モンブラン75というシャープペンシルはモンブラン72という万年筆とセットになっているもので、デザインは統一されている。モンブラン72という万年筆は十八金張りキャップ、十八金ペン先、ボディはプラスチック、ボディの色はブラック、グレー、ボルドー、グリーンと四色揃っていた。私はボディの色はグリーンのモンブラン72を持っていたので、シャープペンシルもボディの色はグリーンのものを選んだ。
 
 モンブラン75シャープペンシルは、芯の繰り出しはノック式で、芯タンクには0.9ミリ芯が二十本ぐらいは入る。シャープペンシルで文字を書いていて芯が短くなり、それを使いきったときは、万年筆ならばキャップのてっぺんにあたるところにあるノックと呼ばれる部分を親指で何回かというより三回か三回押すと、芯が文字を書ける状態にまで押し出されてくる。万年筆のキャップに相当すれ部分は金張りになっている。モンブランのシャープペンシルは75の型までは芯の太さが0.9ミリだったが、その後は0.7ミリの0.5ミリの芯に移行してしまった。
 
 小学生、中学生、高校生、大学生が使用するシャープペンシルの芯の太さは0.5ミリが圧倒的だ。これは樹脂芯の開発により、0.5ミリという太さでも、文字を書いていても芯が折れにくくなり、それとともにシャープペンシルの価格が一本百円などという低さに設定されたため、彼らの日常用筆記具となったと言われている。
 
 私も0.7ミリとか0.5ミリという太さの芯のシャープペンシルを使ってみたことはある。あれは私には向かない。字が細すぎるのだ。私は万年筆のペン先もMより太いものしか使用しない。最も多いのはB、太字である。BB、極太というのも持っている。もっとも万年筆のほうのペン先は、BやBBのものは、全部森山モデルにしてあるので、実際の太さはBはMに、BBはBに近くなっている。しかし、万年筆の場合、私は手帳用以外にはF、細字といったペンは使用しない。文字の線にある程度の太さのあるほうが、好みだからである。
 
 したがってシャープペンシルで文字を書く場合も、文字や数字の線が細いのはどうもしっくりしないのだ。それで0.5ミリや0.7ミリの芯は敬遠し、ずっと0.9ミリ芯のシャープペンシル・モンブラン75を愛用してきたわけである。また私は芯の濃さもBか2Bでないと駄目なのだ。芯が軟らかくて、色の濃いものでないと、たよりない気がするからだ。それは私の筆圧とおおいに関係がある。私は筆圧が極端に低い。万年筆で文字を書く場合、ペン先に力を入れることはない。ペン先は軽く紙に触れるだけ。それでいてかなりの速さで文字を書く。だから私の持っている万年筆は全部、インクの流れのすこぶるよいものばかりになっている。全部、私の書きぐせに合わせて大井町の万年筆店「フルハルター」主人の森山信彦氏に調整してもらったものばかりである。
 
 ほとんど力を入れずに軽く万年筆を握って文字を書くのが私のやり方だから、それはシャープペンシルにしても同じになる。だから私にとってはHBでも芯が硬い気がするのだ。それでシャープペンシルの場合は、0.9ミリの2Bが常用の芯ということになったわけなのである。
 
 私は万年筆の場合だと結局モンブラン146の軸の太さが、私の手の大きさにぴったりだということに気がついた。二十年以上にわたるモンブラン万年筆遍歴のすえにである。この太さが私には最も相性がいい。モンブラン146で文字を書いているかぎり、三時間でも四時間でも五時間でも六時間でも疲れない。五時間も六時間もということは、まずないことではあるけれども……。
 
 そういう私に言わせると、モンブラン75シャープペンシルの軸はやや細すぎると思うのだ。たまに字を書くのならモンブラン75でいっこうにかまわない。ところが私の場合、雑誌の原稿やテレビのナレーション原稿を書くのが仕事になっている。日常的にモンブラン75を使用するわけだ。そして実際ここ十五年ばかり、ずっとモンブラン75を使用してきた。私はせめてモンブラン146とセットになっているシャープペンシル・モンブラン165の太さならなあと何度思ったかしれない。残念ながらモンブラン165というシャープペンシルは芯の太さが0.5ミリか0.7ミリのものしか適用できないのである。
 
 万年筆やボールペンやシャープペンシルや水性ボールペンといった筆記具の軸の太さを考えてみると、軸が細い場合、どうしても力が入ってしまう。軸が太ければ、同じ力を加えたとしても、それが分散されるため、そう力が入ったという感じがしないのかもしれないとは思うのだが……。
 
 とにかく私は、万年筆ならモンブラン146の太さが気に入っているので、シャープペンシルにもモンブラン146と同じ軸の太さで、芯の太さは0.9ミリのものができれば理想的なんだがなあと思いつづけてきた。
 
 その理想のシャープペンシルがついに登場したのである。その理想のシャープペンシルがついに登場したのである。一九九五年一月から販売されるようになった、マイスターシュテュック・グランド・コレクションのなかのシャープペンシル・モンブラン167がそれだ。このシリーズには161というボールペン、166というマーカーも揃っている。軸の色はブラックとボルドーの二色だ。
 
 モンブラン167シャープペンシルは、とにかくモンブラン146万年筆をシャープペンシルにしたものだと考えてもらうとわかりやすい。一番の特徴は軸の太さだ。モンブラン146の軸の太さは、手元のノギスで計測すると1.3センチである。モンブラン167シャープペンシルの軸の太さも1.3センチである。これは当然と言えば当然なのだがこの太さが私にとってはありがたいのだ。
 
 ちなみに私の愛用してきたモンブラン75シャープペンシルの軸の太さはというと、0.95センチである。その差は直径で3.5ミリにすぎない。たった3.5ミリだと思うかもしれないが、直径0.95センチの円周は約3センチであり、直径1.3センチの円周は約4センチで、その差は1センチある。つまり、モンブラン167はモンブラン75に比較して、軸のまわりが1センチ長いということになるのだ。これは軸を握ったときの感じがまったく違う。
 
 これまでモンブラン75を握ったときに、つい力が入ってしまうということがよくあったのだが、モンブラン167の場合はそういうことはなくなった。なにしろモンブラン146の万年筆と同じ太さなのだから。
 
 そして芯の太さは0.9ミリだ。これはモンブラン75シャープペンシルと同じだからなんの問題もない。問題は芯の濃さだ。モンブランの0.9ミリの替え芯はHBしかないのだ。私はこれはしかたがないので、ステッドラーの0.9ミリ2Bという芯に詰め替えて使用することにした。これまでもモンブラン75に詰めていたのと同じものである。
 
 モンブラン167シャープペンシルの芯繰出し機構はノック式ではない。キャップ回転式である。シャープペンシルのキャップ相当部分を右にひねれば芯が繰り出され、左に回すと芯が引っこむ方式である。そして芯を使いきった場合、自動的に芯タンクから芯が出てくるわけではない。その場合はキャップをはずし、芯タンクをふさぐ消しゴムをはずして芯タンクから芯を一本引き出す。そしてその芯をシャープペンシルの先端から押し込むのである。昔の、それも三十年以上前のシャープペンシルの芯の詰め方が復活したのである。戦国時代の火縄銃と同じような、先込め方式と言ってもいいだろうと私は思う。
 
 モンブラン146万年筆は、今から七十年も前に今のものとほとんど同じデザインで発売された。インクの吸入方式は当時と同じ回転式だ。完成された形で登場した万年筆と言えるだろう。なにしろ七十年間モデルチェンジがなかったのだから。それだけではない。ここへきて、軸やキャップにプラチナを用いたり、金とプラチナ、純銀を用いたりしたものが次から次へと登場するようになってきた。
 
 そのことと軌を一にするかのように、モンブラン146万年筆のシャープペンシル版と言うのか、モンブラン167シャープペンシルが、ついに現実のものとして私たちが毎日使用できるようになったのである。七十年もかかってと言うべきなのか、七十年たったからこそと言うべきなのか、とにかく私はモンブラン167シャープペンシルを手にすることができて幸せだと思うものである。
 
 モンブラン167シャープペンシルの使い心地はどうかというと、現在のところ私にとっては理想のシャープペンシルで文句をつけるところはどこにもない。手に持ったときのバランスもいい。芯はステッドラーの0.9ミリ2Bの濃さで紙の上を滑らかに文字を定着させていく。書き損じをしても、芯の濃さが2Bなので、消しゴムで難なく字を消すことができる。なにより手に力を入れる必要がないから疲れない。それは万年筆のときよりは若干よけい力が入っているようには思うが、軸が太いぶんだけ、加える力が少なくていいようだ。これまで愛用していたモンブラン75シャープペンシルに望んでいたことが、モンブラン167には全部備わっているという思いがする。
 
 つまり完璧だと私が思う商品に接したときに、いつも思うことなのだが、その商品に関して私はもう思いわずらうことから解放されて自由になったということなのである。私はシャープペンシルについては、どこかに私の気に入る製品はないかなと思うことはなくなったのである。これから私はシャープペンシルに関するかぎり、モンブラン167だけを常用にするつもりでいる。それが可能になったことがたいへんうれしいと思うのである。

鳥海 忠氏著 『ホンモノ探し』
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# by fullhalter | 2001-03-10 18:34 | 万年筆について書かれた本