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フルハルター*心温まるモノ

第三十九話 この道40年

その前の会社を退職したのが1976年3月、30歳の時だった。
それから求職活動やアルバイトをしながら約1年後の今日、4月11日にモンブラン日本総代理店ダイヤ産業アフターサービス部門に入社した。
「この世界に足を踏み入れて40年」
会社は23Fにあった。
1年もの長い間無職の生活を余儀なくされていた私は、浜松町の1階改札を出て、世界貿易センタービルに入り、エスカレーターで2Fのエレベーターホールに行くまでの、これから仕事が出来るとの歓喜の思いは一生忘れられない。
入社当時ペン先に関しては全て外注さんにお願いしていたので、ペン先をいじることが許されていなかった。
責任者にお願いして、使えなくなったペン先を譲り受け、曲りを直したり、また曲げて直したりと会社以外でも楽しんでいた。


その内に情報を集め、書き味の直しをしたくなり、粒度の違うペーパーを集めたり、
「京都は漆の関係の仕事が多いからいいぺーパーがあるよ。」と聞けば、電話でサンプルを取り寄せた。
床屋さんがカミソリを研いでいる皮革や天然のオイルストーン、包丁研ぎの為の数万円もする和砥石も手に入れた。

沢山あった使えなくなったペン先でこれらの道具を使って調整をしてゆくうちに外注の方(この形の父上は昔ペン先を作っていた人らしい)から
「手造りのペーパーでサブローヤギシタがいいからどこか探してみたら?」と言われ、複数の問屋を訪ねた。

ある問屋で対応してくれた人は、
「幻のペーパーだよ。」と言われ、それぞれの問屋にあるだけ全て買うことが出来た。

使ってみると、これが他の道具たちとは全く違う使い心地で、かけがえのない代わるものなどない、
私にとって真の「幻のペーパー」で、今でも使っている。

では、その「サブローヤギシタの幻のペーパー」をご覧ください。
左が0/10 右が0/7で数字が大きい方が粒度が細かい。

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そのサブローヤギシタのペーパー裏のマークスタンプ

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次に今でも手元に残っている当時求めたオイルストーン

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この業界にモンブランの1950年代に造られた古い製品の修理をしてくださる方がおられた。
今から20年ほど前に仕事を止められたので、ご自宅に伺って余っていたパーツを買い取ったのだが、その時のオイルストーン。

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4~5万円で買った天然の和砥石。今は包丁研ぎの仕上げに使っている。

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では、サブローヤギシタのペーパーから始まる仕上げの工程を。
実際に使っている道具たち。
まずサブローヤギシタのペーパーは四つ切にして使っているのだが、左が未使用(または未使用部がある)
右が使用したもの。

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次に使用しているのが厚地のトレーシングペーパーにクラフト紙。
これらの紙はそれぞれ裏を使った後に表を使う。(裏の方が粗い)

トレーシングペーパー
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クラフト紙
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最後の仕上げは15,000番のラッピングフィルム。
右が未使用で、左はインクをつけて使用するのでインクが張り付いているが、これで仕上げると紙への当たりが柔らかくなる。

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興味があっただろうか…。
難しすぎるたのでは、とも思っている。

次回は、最初のモンブラン出張を…と考えています。


by fullhalter | 2017-04-11 08:13 | 私と万年筆