ヤンセン・ハンドメイド・インク (碧)
最近はインクのブレンドをほとんどしていない。する必要がなくなりつつあるのかもしれない。なぜか? インク研究会のホームページをご覧になっている方々はご存じだと思うが,このところ“プライベート・リザーブ”“ヌードラーズ”などというたくさんのカラーを持った新たなインクが出てきているため,いろいろな色が使えるようになったのも1つの理由だ。インクのブレンドはとても危険で勇気と決断力がいる。これだけのカラーバラエティがあるのにわざわざ危険を冒してブレンドをすることもなかろう。
さてそこで,またまた新たなインクをご紹介しょう。今回のインクはドイツ生まれだ。名前を「ドクター・ヤンセンのハンドメイド・インク」という。前々から森山さんの所に情報が入っていて,待ちに待った現物を手に入れたのでここでご紹介したい。
私が手に入れたのは偉人の名前がインク名になっているテーマ・インクというシリーズのうちの5色である。
Karl Marx(カール・マルクス):ドイツの哲学者であり,経済学者であり,革命家。革命運動の傍ら経済学の研究を進めた『資本論』はあまりにも有名だ。『共産党宣言』を起草した彼の色はもちろん赤だ。しかし,私はゆるせない。このインクは正確には赤ではない。どちらかというとピンクなのだ。はっきり言って“ピンクっぽい赤”,女子高校生が喜びそうな色なのだ。墓場の下からマルクスが出てきて抗議をしそうな可愛さだ。資本論的(?)にもっと厳格な人を寄せ付けないような血のような“金赤”が私の想像していたマルクスの赤なのに!レーニンもきっと涙を流して悔しがっているに違いない。う~ん,でも確かに可愛い色だ。うちの姪っ子に取られないように隠しておかないと……。

Napoleon Bonapart (ナポレオン・ボナパルト) :皇帝に相応しい色は何か? やはりモンブランのキングズ・ブルーのような渋~いブルー? それともシェファーのキングズ・ゴールドのような黄金色か? と思って開けてみるとなんともしぶ~い空色だ。ペリカンの1950年代のキングズ・ブルーを薄くしてブルーブラックに近づけたようなくすんだ空色だ。ブルーブラックと言っても良い色合いだ。万年筆による濃淡が出て実にマンダムだ。

Friedrich Schiller(フリードリッヒ・シラー) :ゲーテと並称されたドイツの古典主義劇作家・詩人。モンブランの作家シリーズの万年筆を思い出してしまう。あのイメージからすると赤茶色か? と開けてみるとグレーだ。セーラーのインクにあるグレーが一番近いかもしれない。ただよ~く見るとグリーンがかっているグレーにも見える。とにかく渋いくすんだグレーだ。

Charles Dickens(チャールズ・ディケンズ) :あまりにも有名なイギリスの国民的作家。日本では『クリスマス・キャロル』『二都物語』を知らない人はいないだろう。わたしは個人的には『ディヴィット・コパフィールド』が好きだが……。上記シラー同様モンブランの作家シリーズの万年筆にもなっているが,その万年筆の同軸の色とほぼ同じブリティッシュ・グリーンである。モンブラン作家シリーズのディケンズの万年筆を手に取ったことのある人はおわかりだと思うが,ブリティッシュ・グリーンと言っても,ほとんどグレーに見える。このインクも太陽の光の元でよ~く見るとグリーンなのだが,照明や紙によってはまったくグリーンに見えなくなる。

Johann Wolfgang von Goethe(ヨハン・ウォルフガング・フォン・ゲーテ) :ドイツの詩人,小説家,劇作家。『若きウェルテルの悩み』など,もはや説明の必要はなかろう。『碧ちゃんの悩み』は部屋がインク瓶だらけで掃除が非常にしづらいことだ--閑話休題--。さて,インクの色は私の悩みと関係なくモスグリーンだ。上記ディケンズを少し濃くして,少しはっきりさせたようなモスグリーンだ。碧ちゃんの悩みを吹き飛ばすような,すんばらしいモスグリーンなのだ。また,私のブレンドした“お茶葉グリーン”とも似ている。お茶葉グリーンを薄くするとこんな色になるのではないかというような色合いだ。今回の5本の中では碧ちゃん一押しのインクである。グレイト!!

さて,それでは実際の色を以下の色見本で見ていただきたい。全体的に“プライベート・リザーブ”や“ヌードラーズ”と違って色合いが薄く,くすんでいる印象だ。文字を書くと濃淡が出て味わいがある。国民性の違いか,アメリカのインクのようにそれぞれがはっきりとした色彩ではなく,落ち着いた深みがあるように思う。好き嫌いがはっきりと出そうだ。 この5色だけで耐水テストをしてみた結果が以下の如くです。全体的に水に流れます。それでもこの5色の中ではゲーテが一番水に強く,逆にマルクスはほとんど水に流れてしまいました(名前のイメージからするとマルクスが一番強そうな感じがしたのに予想とまったく逆でした。しかし悲しいかな,共和主義は消えていくのね!)。


使用してまだ1週間だが,いくつかの使用感をご報告しよう(以下はすべてディケンズを使用しての結果です)。 まずは,紙によってインクの乾きは異なるが,私の使用している紙では結構早くインクが乾いている。最近になってヌードラーズは乾きの遅さが欠点だと思っていたので,この早さは心地よい。あくまでも私の使用している万年筆と用紙においての結果なので結論は出せないが,碧ちゃんは満足である。 そして,インクフローの方はけっこう言い感じだ。万年筆にインクを入れて,1週間まったく触らないで放置しておき,突然書いても,スルスルとインクが出てきた。セーラーのクロスポイントに入れるとインクの泉のようになり,まさしくFountain Penになる。またその万年筆を水で洗浄してみたが,きれいにインクが流れ落ちてくれた。まだまだ,使い始めたばかりなので,何かわかりましたらまたご報告いたしましょう。
さて,このインクはドイツではまだまだたくさんの色の種類があるらしい。 今回日本の代理店を通して入荷予定のものはシリーズごとに名前がついていて,「テーマ・インク」が11色,「スタンダード・インク」が25色,「ロイヤル・インク」が5色となっている。 今のところすぐに手にとって買うことのできるのは,東京駅丸の内側出口からすぐのオアゾ内の新しい丸善の4階万年筆売り場で,11種類のテーマインクが置いてある。また,神戸ナガサワ文具センターでもいくつか取り扱うようだ。しかし1680円と割高の値段がこのインクの最大の欠点だろう。
さてそこで,またまた新たなインクをご紹介しょう。今回のインクはドイツ生まれだ。名前を「ドクター・ヤンセンのハンドメイド・インク」という。前々から森山さんの所に情報が入っていて,待ちに待った現物を手に入れたのでここでご紹介したい。
私が手に入れたのは偉人の名前がインク名になっているテーマ・インクというシリーズのうちの5色である。
Karl Marx(カール・マルクス):ドイツの哲学者であり,経済学者であり,革命家。革命運動の傍ら経済学の研究を進めた『資本論』はあまりにも有名だ。『共産党宣言』を起草した彼の色はもちろん赤だ。しかし,私はゆるせない。このインクは正確には赤ではない。どちらかというとピンクなのだ。はっきり言って“ピンクっぽい赤”,女子高校生が喜びそうな色なのだ。墓場の下からマルクスが出てきて抗議をしそうな可愛さだ。資本論的(?)にもっと厳格な人を寄せ付けないような血のような“金赤”が私の想像していたマルクスの赤なのに!レーニンもきっと涙を流して悔しがっているに違いない。う~ん,でも確かに可愛い色だ。うちの姪っ子に取られないように隠しておかないと……。

Napoleon Bonapart (ナポレオン・ボナパルト) :皇帝に相応しい色は何か? やはりモンブランのキングズ・ブルーのような渋~いブルー? それともシェファーのキングズ・ゴールドのような黄金色か? と思って開けてみるとなんともしぶ~い空色だ。ペリカンの1950年代のキングズ・ブルーを薄くしてブルーブラックに近づけたようなくすんだ空色だ。ブルーブラックと言っても良い色合いだ。万年筆による濃淡が出て実にマンダムだ。

Friedrich Schiller(フリードリッヒ・シラー) :ゲーテと並称されたドイツの古典主義劇作家・詩人。モンブランの作家シリーズの万年筆を思い出してしまう。あのイメージからすると赤茶色か? と開けてみるとグレーだ。セーラーのインクにあるグレーが一番近いかもしれない。ただよ~く見るとグリーンがかっているグレーにも見える。とにかく渋いくすんだグレーだ。

Charles Dickens(チャールズ・ディケンズ) :あまりにも有名なイギリスの国民的作家。日本では『クリスマス・キャロル』『二都物語』を知らない人はいないだろう。わたしは個人的には『ディヴィット・コパフィールド』が好きだが……。上記シラー同様モンブランの作家シリーズの万年筆にもなっているが,その万年筆の同軸の色とほぼ同じブリティッシュ・グリーンである。モンブラン作家シリーズのディケンズの万年筆を手に取ったことのある人はおわかりだと思うが,ブリティッシュ・グリーンと言っても,ほとんどグレーに見える。このインクも太陽の光の元でよ~く見るとグリーンなのだが,照明や紙によってはまったくグリーンに見えなくなる。

Johann Wolfgang von Goethe(ヨハン・ウォルフガング・フォン・ゲーテ) :ドイツの詩人,小説家,劇作家。『若きウェルテルの悩み』など,もはや説明の必要はなかろう。『碧ちゃんの悩み』は部屋がインク瓶だらけで掃除が非常にしづらいことだ--閑話休題--。さて,インクの色は私の悩みと関係なくモスグリーンだ。上記ディケンズを少し濃くして,少しはっきりさせたようなモスグリーンだ。碧ちゃんの悩みを吹き飛ばすような,すんばらしいモスグリーンなのだ。また,私のブレンドした“お茶葉グリーン”とも似ている。お茶葉グリーンを薄くするとこんな色になるのではないかというような色合いだ。今回の5本の中では碧ちゃん一押しのインクである。グレイト!!

さて,それでは実際の色を以下の色見本で見ていただきたい。全体的に“プライベート・リザーブ”や“ヌードラーズ”と違って色合いが薄く,くすんでいる印象だ。文字を書くと濃淡が出て味わいがある。国民性の違いか,アメリカのインクのようにそれぞれがはっきりとした色彩ではなく,落ち着いた深みがあるように思う。好き嫌いがはっきりと出そうだ。 この5色だけで耐水テストをしてみた結果が以下の如くです。全体的に水に流れます。それでもこの5色の中ではゲーテが一番水に強く,逆にマルクスはほとんど水に流れてしまいました(名前のイメージからするとマルクスが一番強そうな感じがしたのに予想とまったく逆でした。しかし悲しいかな,共和主義は消えていくのね!)。


使用してまだ1週間だが,いくつかの使用感をご報告しよう(以下はすべてディケンズを使用しての結果です)。 まずは,紙によってインクの乾きは異なるが,私の使用している紙では結構早くインクが乾いている。最近になってヌードラーズは乾きの遅さが欠点だと思っていたので,この早さは心地よい。あくまでも私の使用している万年筆と用紙においての結果なので結論は出せないが,碧ちゃんは満足である。 そして,インクフローの方はけっこう言い感じだ。万年筆にインクを入れて,1週間まったく触らないで放置しておき,突然書いても,スルスルとインクが出てきた。セーラーのクロスポイントに入れるとインクの泉のようになり,まさしくFountain Penになる。またその万年筆を水で洗浄してみたが,きれいにインクが流れ落ちてくれた。まだまだ,使い始めたばかりなので,何かわかりましたらまたご報告いたしましょう。
さて,このインクはドイツではまだまだたくさんの色の種類があるらしい。 今回日本の代理店を通して入荷予定のものはシリーズごとに名前がついていて,「テーマ・インク」が11色,「スタンダード・インク」が25色,「ロイヤル・インク」が5色となっている。 今のところすぐに手にとって買うことのできるのは,東京駅丸の内側出口からすぐのオアゾ内の新しい丸善の4階万年筆売り場で,11種類のテーマインクが置いてある。また,神戸ナガサワ文具センターでもいくつか取り扱うようだ。しかし1680円と割高の値段がこのインクの最大の欠点だろう。
by fullhalter
| 2004-10-08 12:28
| インク研究会