『鳳凰』
ご存知の方が居られたら、万年筆のみならず、時計にも詳しい方であろう。
若手(?)の嘱望株らしい。
店に来られる方で、もの凄く時計好き、詳しい方が居られる。その人に、
「夢舟さんが、今度ピーター・スピークマリンという時計師の文字盤に蒔絵を描くことになったのですけど。知ってます?」と聞いてみた。すると、
「知っているどころか、私が大好きな時計師で3本の指に入るかもしれない人だよ。」という話だった。
その後、夢舟さんご夫婦とお祝いをした。
その位凄いことだと、私は思っている。
では、3ヶ月間他の仕事を一切せず、専念して出来上がった「鳳凰」蒔絵のピーター・スピークマリンの時計をご覧いただきたい。
残念ながら、「鳳凰」の蒔絵の本当の味わいが出ていないと、私は思っている。
この蒔絵を気に入られたピーターは、今年になってバーゼルのフェアーに間に合うように、もう一つ「龍」を描いて欲しいという強い要望を伝えてきた。
夢舟さんは4月の始めまでに精魂込めて描き上げ、今年4月のバーゼルには「鳳凰」、「龍」の作品二つが並べられたらしい。
蒔絵がいろいろなモノに描かれている。
万年筆の世界ではペリカンのみならず、他の外国メーカーでも造られている。
今回は世界的に有名な独立時計師の文字盤に。
日本の宝である蒔絵が世界に認められ、進出してきているような気がする。
外国の方々に蒔絵の質が判るのだろうか。
ただ、商売になればは、世の常。
本当に質の高い蒔絵、つまりは描き手が妥協しない心を持って描いたモノ。
そうしたモノを供給していかないと日本の蒔絵そのものの評価を落とすのではないかと心配である。
そこに携わる人々に心して欲しいと、願うばかりである。
【 作者の言葉 】
今回、独立時計師のピーター・スピークマリーン氏とコラボの蒔絵時計のお話しを頂きました。
ご協力頂いた方からピーターさんの資料を集めて頂き、ピーター氏の時計に対する思いやこれまでの経緯など自分と考えが似ていること、ピーター氏の時計にとても感動したことなど含め、3.4cmの文字盤に蒔絵を施すことになりました。
スイスのバーゼルフェアーに出品しても恥ずかしくないピーターと自分の誇れる時計を発表したいとはじめたのですが、これだけの細かい作業に特殊な眼鏡を注文したり、自分で、道具を作ったりしながら何とか仕上がったときには、感動か?疲労か?しばらく仕事ができない状態でした。