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フルハルター*心温まるモノ

『髪鋏』

  この方にはじめてお会いしたのは、2003年8月16日だった。
毎日、毎日、新しい出逢い、嬉しい出逢いをいただいている私であるが、この方との出逢いは、とても印象深いものだった。
お二人でいらしてくださって、いつもの通り、ゆっくり、じっくりお話しさせていただいたのだが、今は仕事はしていないが、この先自分のしたい仕事に従事出来るという。
希望に満ちた好青年。

  ただ、今は収入がない。
何とかこの好青年に合った万年筆を探したくなった。
私にそう思わせる方だった。
万年筆をお渡しした時は、とても喜んでくださった。
その時に、
「今度給料もらったら、このペリカン600茶縞のボールペン買いにきます。」
「じゃ~、それまで取っておきますね。」

  それきり来られなかった。
「ど~したんだろう。」と思いながらも、彼が指定した600茶縞ボールペン 柄が1本1本違うので、そのまま置いておいた。

  それから、2年くらい過ぎただろうか。
また2人で訪ねてくださった。
「や~久し振りだね。どうした。」
「あの仕事はダメだったんですよ。だから来れなかったんですけど、今は別の仕事につけたので来ました。」
「よかったね。どんな仕事?」
「美容、理容師専用の鋏を販売している会社です。」
その日、ペリカン茶縞ボールペンを嬉しそうに連れて帰られた。

  それから、万年筆のご注文にもいらしたが、彼が扱っている鋏を見せてくれた。
2本あったのだが、その内の1本に強く心を惹かれてしまった。
「これいいね。このサイズだけ。」
「もう少し小さいのと二種です。」
「小さいほうがいいな。」
「僕も小さい方が好きですけど。」
「じゃ~小さい方をお願いします。」

  昨年末いらしてくださった。
思いがけない言葉だった。
「僕、今成績がいいので、社長に話したらプレゼントしていいと言われましたので。」
いや~参った。
こんな高価なものを。

  息子に見せたら、
「カッコイイネー。」
何なんだろうか。
万年筆もそうなのだが、道具全てに共通していると私が思っていることは、造り手の思いが必ずその姿・形に表れる。
その思いが深ければ深い程、人を感動させる。
「この鋏も造り手の深い思いが、その形にあらわれたんだよな~。」
では、そろそろ画像をご覧いただこう。

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  この大好きな姿・形の美しい鋏に、これも大好きなペリカンM600茶縞を添えて  
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  この鋏は、理容師、美容師の専用であり、価格は9万~10万である。
職人の仕事は、道具で決まると言っても過言ではない。
その前に腕を磨くことはいうまでもないが。
道具をケチっては、いい仕事は出来ない。
ありがとう、彼。
この鋏の使いみち、じっくり、ゆっくり考えます。
by fullhalter | 2007-01-12 17:51 | 私の好きなもの