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フルハルター*心温まるモノ

モンブランNO.72 

 1977年(昭和52年)モンブラン日本総代理店 ダイヤ産業(株)に入社した。
その当時、私が憧れていた1960年代に造られたモンブラン製品が僅かであったが残っていた。


 私に万年筆の良さ、姿・形の美しさ、そして人としてどう生きるかを教えてくれた、影響を与えてくれた人が居る。
大学生の時のアルバイト時代の先輩で、当時これが不思議な人だった。貧しい私にはとても手が出ない万年筆たちを次から次へと持ってくる。パーカー51・61・VP等々。それがいつの間にかなくなっている。ある時、
「あのパーカーは、どうしたのですか?」と尋ねるとその先輩は、
「あ~、あの人が好きだって言ったからあげたよ。」
いとも簡単に言う。1960年代に造られた金張りキャップの美しいパーカーの万年筆たちをである。
「何だ、この人は。」
「俺には理解出来ね~」と心の中で呟いた。その先輩の心の中を探る為に聞いた。

「何であんな高価で、しかも今は入手が難しい姿・形の美しい万年筆たちを簡単に人にあげてしまうんですか?」
「森山君、造り手が拘りを持って、心を込めて造ったからあんな姿・形をしているんだよ。ああいうモノを探す喜び、見つけた時の喜び、君に判るかな。ああいうのを見つけた時、他の人に買われてしまうのがとっても僕には許せないんだよね。」
「じゃ~何故あんなに簡単に人にあげてしまうんですか?」
「自分だけのモノにしてしまったら、自分だけ、たった一人の喜びでしょう。でも、それが本当に好きだと言う人にあげれば2人の喜びになるでしょう。更に思いを込めて造った人達の喜びも考えたら、一人の喜びが大勢の喜びになり、それが僕の喜びになるんだよね。」

 参った、本当に参った。
今時(と言っても、三十数年前の話だが)こんな人がいるんだ。
この先輩からは(”私と万年筆”のところで既に書いているのだが)モンブラン モンテローザ(No.042) No.142をいただいた。

 さて、ダイヤ産業入社後に話を戻そう。
その先輩の影響を少なからずも受けていた私は、
「こんなにいい製品を『こんなのあるから買ってみるか。』というような人に買われるのは許せない。」と心から思っていた。給料は殆ど60年代の製品達に代わっていた。今考えてみると、私も病気だった。でもいい病だよな~と本気で思っている。

その当時沢山買ったNO.72の画像をご覧いただくことにしよう。
ただ、ダイヤ産業入社後に始めて買ったNO.72は私自身で遊んでしまい、本来の姿・形から変わってしまっている。本来の姿・形はNO.72よりひと回り大きい8月27日更新のNO.74と同じなので参考にして欲しい。

遊んだ箇所は、天ビス・尻軸・そして首軸である。
モンブランNO.72 _e0200879_1618304.jpg


モンブランNO.72 _e0200879_16184112.jpg


モンブランNO.72 _e0200879_1619020.jpg

本来の天ビスは角ばっているのだが、丸くしてしまった。

モンブランNO.72 _e0200879_162074.jpg

尻軸も丸く研ぎ出した。

モンブランNO.72 _e0200879_16362787.jpg


 本来のNO.72と比べ、この遊んでしまったNO.72どう感じていただけたのだろうか。私は本来のNO.72も遊んだNO.72も大好きである。
次回からは本来のマイコレクションに戻る。
by fullhalter | 2004-09-17 16:16 | マイコレクション