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フルハルター*心温まるモノ

モンブランNO.14・NO.74 

 1966年頃だったと思う。
大学生の時に何か手に職をと常々考えていた私は、写真も好きだったので撮影技師を求めていた写真館でアルバイトすることになった。その始めての給与で一生に記念として憧れのモンブランを買うことにした。当時モンブランでどんな製品が造られているのかも知らなかった私は店頭でいろいろと見せてもらった結果、一番高いNO.14にすることにした。1ヶ月働いたアルバイト代が15,000円だった私には、NO.14は9,500円ともの凄く高価で一生の記念にふさわしかった。

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 ペン先はMを選んだのだが、これが私には余り書きやすくなかった。インクを入れてはしばらく使うのだが、書きやすいと思えない為途中で止め、内部を洗浄しては休ませる。この繰り返しだった。この過程で貴重な体験をした。しばらく休ませてからインクを入れて使うと必ずインクがボタ落ちした。始めはびっくりしたのだが、二回目、三回目は少々我慢して使えば必ずボタ落ちしなくなるので、安心して使えた。
「万年筆って奴は、ほおっておくと反抗する道具なんだ。」という貴重な体験である。

 それから20年余り。その当時も使っていなかったのだが、引き出しから出してみたらキャップが割れていた。
「何でだよ。何もしてねーのに。書きにくいし、キャップは割れるし。」
モンブランのサービスステーション(浜松町 世界貿易センタービル内)を訪れた私に対応してくれた方は
「NO.14は硬い樹脂製なので、内部からの圧力で割れることがあるから金張りの74にした方がいいですよ。」と言った。NO.74は写真館のアルバイト時代に客先だった大学の教務課の人が買った時に
「すげ~の買ったな~。」と何人もの人が見に来たといういわれのあるモデルだったので、
「それでお願いします。」と即答した。

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 NO.74がきっかけとなって入社した。
一生の記念に買ったモンブランNO.14が20年後に私の人生を変えた。
「よくぞ割れてくれた。」まさに神からの贈りものである。

 次回はモンブラン入社後の物語を……。
by fullhalter | 2004-08-27 10:56 | マイコレクション