<9> 開高 健氏 その4
――出会いからとたんに好きになれるというモノはないのである。飼いならし、書きならし、使いならしていくうちに好きなのとそうでないのとが出てくるのであって、それにやっぱり忍耐がどうしても求められる。忍耐してもいいという気になれる物とそうでない物とがあるんであって、それは究極のところ、ブランドではありますまい。 (1982年録)
前回の「つれあい」と同じような意味であろう。
本当に好きになって情がわいてくるまでには忍耐が必要であり、家柄やブランドではないということだろうか。
大好きな開高氏に逆らうつもりはないのだが、私は初めから好きになってもらいたいと思っている。その為にゆっくりとお客様とお話をし、その方のライティングスタイルを見てどんな万年筆が合うのか、またその方の字体からペン先の太さについてもアドバイスしている。
「お客さまの字でしたら、極細が似合うと思いますよ。」とか、「お客様の字でしたら極太が似合いますよ。これがペリカンの3Bのサンプルですから、お試しになってください。いい字じゃないですか。そうは思われませんか。手紙や葉書を貰った方はきっと喜ぶと思いますよ。」と言った具合に。
こんな会話をしながら、メーカー・モデル・色・ペン先の太さを決めていただき、その方の角度や筆圧そしてお好みに合わせて販売している。お客様に初めの出会いから好きになっていただける万年筆をお渡し出来ることを願って、今後も努力したい。
by fullhalter
| 2002-04-20 11:34
| 作家と万年筆