<8> 開高 健氏 その3
――万年筆というものは何十年と同棲してそのあげくようやくなじみあえる器物なのだから、そうであるなら、ちょっと夫婦関係に似たところがあり、そうであるなら、夫婦関係は50歳をすぎたらおたがい慈悲で接しあえるようになるという話があるくらいなのだから、歳月の錬磨に待つしかありますまい (1982年録)
今回の開高健氏は万年筆を夫婦関係になぞられておられる。
<フルハルターのポリシー>のページで、「万年筆と女房は人に貸すな」ということわざは日本固有のものかと思っていたが、ドイツにも同じことわざがあったと紹介した。開高氏の言っておられることは、正にそのことであろう。
また、藤本義一氏は万年筆との関係を、夫婦関係でなく、親子関係になぞられている。(作家と万年筆第三話) このお2人は同じことを感じておられたのではないだろうか。
歳月の練磨の後に、万年筆は指の1本に化していくのであろう。
by fullhalter
| 2002-03-29 11:13
| 作家と万年筆