<6> 開高 健氏 その1
――何本かやってみたのだが、生き残って連れ添ってくれたのはこの1本だけである。
それだって、特にきわだった顔つきで登場したのではなく、あれやこれやと使っているうちにいつとなく生き残ってくれたのである。 (1982年録)
万年筆について述べられた作家の方々の中でも、私が最も万年筆の本髄を言い表していると思っているのは、開高 健(かいこう たけし)さんである。
開高さんが言われている言葉の奥にある深さは、なかなか理解してもらえないのではないかと私は思う。
道具として常に使われていた開高さんだからこそ、万年筆の奥の深さを体で感じられ、それを言葉で表現できたに違いない。
これから6回に渡って紹介してゆくので、是非楽しんで欲しい。