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フルハルター*心温まるモノ

第四話 クロスポイントとの出会い 

『クロスポイント』との出合いは、私の万年筆に対する思いを深くし、大きく拡げてくれた。

  作り出されたのは、セーラー万年筆でこの道50年を超えられた長原宣義さんだ。私は、万年筆極太ペン先の究極であると思っている。
 
  長原さんは、クロスポイントのみならず、素晴らしいアイディアを実現されている方だ。ひとつ例を上げると、ある画家のデッサン用のペン先を作ってあげたいと思っていた東京出張中の夜中に、フッとアイディアが浮び、そのまま朝までに仕上げてしまった。そのペン先は先端部分から3~4ミリのところから右に45°程度曲げて仕上げてあり、万年筆を左に回転させながら線を描くと、太さは、細く書けるところと太く書けるところの差が、10~20倍にもなっていた。日本橋のデパートから電話があり、「すごいものが出来たので、お前に見せたい。すぐに来い。」と言われたその時のペン先である。
  
  これだけではない。セーラーのペンドクター長原さんは、使い手の用途により、ペン先の先端部分のみ上に曲げたり、下に曲げたりして仕上げ、これまで諦めるしかなかった個人の要望に応えておられる。今は京都洛西の煤竹で万年筆を作っておられるが、初期モデル(といっても2年前位であるが)は、ボディには何もつけていなかったが、次にはキャップと胴軸の互いに接する部分に金属をつけ、次は2色を絹糸を巻きその上に漆を塗った。更にそれらの頭と尻に螺鈿をつけ、最新作はその上に18金無垢の糸を巻き付けたものになった。
  
  これらは、本道を極めた上での遊び心だと思う。遊び心は人生を豊かにしてくれるだろう。クロスポイントに話しを戻すと、形状は、極太として非常に理に適った素晴らしい形状で、インクの含みが多く、筆記角度の左右のねじれに対する書き出しインク切れの欠点をものの見事に解決したペン先である。
  
  今通常の製品として販売されているもので、一番太いペン先は、ペリカン#1000、#800の3Bであろうが、このクロスポイントは、それらの二倍位の太さに書けるよう仕上げられる。以前有名俳優の方から太ければ太い程良いので何かないかと言われて仲介したのだが、おおいに満足していただいた。これから少しでも多くの方々に、世界中の万年筆好きの人たちににクロスポイントを試し、書き味を味わっていただきたい。きっと、万年筆の世界が拡がることと思う。
by fullhalter | 2001-01-01 18:58 | 私と万年筆