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フルハルター*心温まるモノ

<1> 北方謙三氏

――僕には品物に名前をつける趣味があり、この3本の万年筆には「武蔵」「サム・スペード」「狂四郎」という名前がついています。書くのに苦渋しているときには「武蔵」を握って根性で書き、頭が冴えわたっているときは「狂四郎」を握ってさらに冴えて書き、ちょっと大量に書くときはバタくさくてタフなヤツ、「サム・スペード」で書くというわけです。  (1984年録)


私の経験から、作家に限らず、書き始める時は構想が定まらず、書いては破り、書いては破りを繰り返すことが多い。そのうち気分が乗ってくると、泉のように湧き出してくるものを流れるように早く書くために、自然と筆圧が強くなり、ペン先の腰の強い万年筆が合ってくる。

よく作家は、たたく様にして書くと言うが、その時は筆圧をしっかりと受け止めてくれる、かたいペン先が安心感を生む。北方さんも、「武蔵」「サムスペード」「狂四郎」、三本の万年筆の個性を活かして使い分けておられるのだろう。
by fullhalter | 2001-01-01 18:54 | 作家と万年筆