フルハルター*心温まるモノ

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マツヤ万年筆病院

仕事でドイツへの長い旅は何度もあったのだが、
元々家が一番な私は、旅に出たいともあまり思うことはなかった。

そんな私が長崎に行って来た。
長崎もだが、この歳になって初めて九州の地を踏んだことになった。
長崎はと言うと、坂道ばかりで少々疲れたが、思った通り良い所だった。
中でも一番は、人との出会いだった。

長崎に着いた日、女房が行きたいという洋菓子店を探し歩いていると
いきなりマツヤ万年筆病院が目の前に現れた。
女房は、「あそこがマツヤ万年筆病院、事前に調べておいたから。」と言う。
長崎観光マップに赤で印が付けられていた。

雑誌等で見慣れた「マツヤ万年筆病院」のロゴが大きく、歴史を感じさせる。
お客様、業界の方々から「いい万年筆屋さんだ」と聞いてはいた。
今回の旅で機会があればご挨拶を、と思ってはいたのだが、
何せ、いきなりだったので少し驚いた。
けれど、迷うことなく中に入ることにした。

ご迷惑かなと思いながら、ドアをソッと開けた。
前に進んで
「私、客ではないのですが…。同業者でフルハルターの森山と申します。」

その時のご主人の顔が忘れられない。
私が言うのは…と思うが、心から嬉しそうな表情をされたのだ。
「あ~!私も会いたかったのですよ!」と言われて、深々と頭を下げられた。

直ぐにご主人は女房にも会わせたいからと、外出中の奥様に電話をするとおっしゃる。
奥様も戻られ、それからは話が尽きなかった。

楽しい時間だった。
今まで噂には聞いてはいたが、実際にお会いして「いい店」を実感した。
そして、お二人のお人柄が何より素晴らしかった。
これを機会に仕事では難しいと思うが、個人的な繋がりが出来れば嬉しいと思う。

店を出てから、一緒の写真でも撮ればよかったのに全く気が回らなかったと女房。
私にとっては、写真よりはるかに心に残る時でした。
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by fullhalter | 2011-09-27 12:30 | 旅・ウオーキング

観海べっ甲店

長崎のオランダ坂付近に鼈甲店が並んでいる。

ホテル近くのその辺りを歩く度、気になっていた。
天然素材が好きな私には、鼈甲はとても魅力なのだ。

何軒かの店の前を何度も通りながら
私には本能的にこの店、と思う店があった。
その店が「観海べっ甲店」だった。
いつしか最終日には絶対に店に寄ると心に決めていた。

その時がやってきた。中に入り、
「見せていただいてよろしいでしょうか。」と言うと
店主の観海安幸さんが、ドアの所に歩いて来られ、
「どうぞ」と迎えてくれた。
その瞬間、職人の匂いを醸し出している方と思った。

私は、(十二支だとかの)土産物屋に並ぶものには興味がない。
だから率直に
「当たり前の形ではなく、素材からこの柄がいいというものや、
小さいもので個性豊かなものってないでしょうか?」
と尋ねてしまった。
すると、「デッサンしてくれれば造りますよ。」という返事が返ってきた。

ショーケースに並ぶ小さな品、昔ながらの櫛、
味わいのあるブローチなどを次々と見ながら
同じ鼈甲でも色合い、濃淡が様々であり、
同じような形であってもそれぞれが全く違った持ち味になっているな、と感じていた。

私が気に入ったペンダントを指して女房に聞くと
女房は「ウーン…。」と少しの間考え、
自分はこの中でこれが一番好きだと言って別のものを示した。

それはどちらかと言うと琥珀に近い色合いのものだった。

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こちらは私が選んだもの
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                                      裏
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2つを手に取ったまま、勧められるまま腰をかけた。
テーブルに選んだものを置いて
途中から店に来られた奥様もまじえてお話しさせていただいた。

物造りの喜び、苦労等々話しているうちに、
観海さんは本物しか使われないことが判ると同時に、「職人」と思った。
何件かの店を通り過ぎた後、この店に入った私のカンに間違いはなかった。
満足だった。

テーブルを挟んでいろいろと話している間に、私の目を引き付けるものがあった。
それは、何とも言えず味わい深い、優しげな小さなもの。

「これ、何ですか?さっきから気になり好きなんですけど。」
「これは樹脂ですが、ずっとここに居たヤツです。」
「樹脂?まるで象牙のようですね 飴色になっていますね。」

長い時を経過しなければならない「熟成」である。

「譲っていただけないでしょうか…。」
ご主人はいとも簡単に
「あ~、あげますよ。」とおっしゃる。
「そうはいきません!長い時間をかけないとこういうものは出来ない。」
「うちは本物の鼈甲しか使わないんで。」
結局、いただいてしまった。

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奥様と話している時にご主人が仕事を始めた。
何かを造っているようだった。
仕事の邪魔をしては申し訳ない、
そろそろ失礼しなければと思っていたところに、
「これ希少の水もくでハートを造りました。水もくのハート初めてなのですが差し上げますので使ってください。」
とご主人。

鼈甲は、背甲、爪(縁甲)、腹甲があるが、
希少ものとして背甲の一部に、「水もく」という白い縞部がある。

この「水もく」は、自然の模様なのだが、
描いたたもののように思う人が殆どだと言う。
私も初めはそうなのかとも思った。
しかし、よくよく見ると、描いたものではない、素材そのものの質感、線質、
そして、ただの黒と白と表現出来ない天燃の色調。

モノにあまり興味を示さない人間が惹かれているのがよく判った。
ご主人はそのハート型の作品に携帯のストラップ用の金具を付けてくださった。
珍しく水もくに惚れ込んだ様子の女房が、ネックレスにつけたいと言い出し、
ネックレス用の鎖を通すリングをお願いすると、鼈甲のリングを付けてくださった。

鼈甲のリングをつけると全体の印象がグッと変わった。

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私も職人と判ったご主人は材料を下さった。
いつ形になるか判らないが、そのいただいた材料です。

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その後、他を巡っている時、
鼈甲で何か文具関係のものは出来ないかと思い出し、
その思いが時間とともに強くなったいった。

ご迷惑を顧みず、数時間後に再び「観海べっ甲店」を訪ねてしまった。

先ほどのお礼を述べた後
「何か文具関係のものを造られたことはありますか?」と切り出した。
以前に造ったペーパーナイフ出してくれたが、今の時代は難しいとのこと。
その変わり、和菓子の時に用いる黒文字を見せてくださった。

* 黒文字とはクスノキ科の落葉低木の名前で、その木で造られた楊枝のことも黒文字と呼ばれている。

漆でも造られているが、鼈甲の黒文字はそれより少し小さい。
それでもペーパーナイフとして使えるのではと思い、求めた。

帰ったら丁度、萬年筆くらぶの「fuente」が届いていた。
「fuente」は袋とじになっているので、鼈甲の黒文字を早速使ってみた。
思った通り充分使える。

皮革製品でも何でも造り手としては当然「これ用」としてものを造り、売っている。
その一方で使い手が違う目的で使うことは、粋で楽しいことだ。
この黒文字もペーパーナイフとして充分使える。

黒文字

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先が尖っていて薄くしてあることがお判りになるだろうか。

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マツヤ万年筆病院に続き、濃密な時間を過ごすことが出来た。
職人とはいいものだと改めて思うことが出来た、いい旅行だった。
旅に出てもどこにいても、同じだ。
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by fullhalter | 2011-09-27 12:08 | 職人の仕事

 ペリカン「月光 M1000 moonlight」(印刷物より)

思いがけずもペリカン社から大好きな螺鈿の限定品、それもM1000の「月光」が発売される。
M800では「旭光」「月光」として既に発売されているので感じをつかめている方も多いと思う。
今回のM1000は「月光」のみだが、ペン先の腰の柔らかさがたまらない。
私自身、大歓迎である。
僅かだが製品を確保したので、「欲しい」と思われる方は早目にご予約ください。

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1.製品名:『月光 ~M1000 Moonlight~』
2.価格:税抜き¥200,000
3.仕様
ペン先:ロジウム装飾18金 (M)
キャップ・胴軸:螺鈿
4.作者:松 田 典 男
*作者名は胴軸に蒔絵で表示
5.製作数量:世界限定 200本 (国内販売予定 80本)
6.発売予定時期:平成23年10月下旬
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by fullhalter | 2011-09-24 14:05 | 限定品万年筆

FlickerⅡ

小さい頃から皮革製品のグリーンやワインが日本では少ないことに
不満を持っていたことは前にも申し上げた。
数年前にケーズファクトリーさんにお願いして
サドルプルアップのグリーンとワインをオリジナルで造ってもらった。
それも既に原皮はなく、これから造ることは出来ない。
今、製品として僅かに残ってはいるが。

第二弾でご覧いただいたSpankerⅡのグリーンは
私が使っていたもので最も熟成してくれたものと
自信を持っていた。

だが、今回ご覧いただくFlickerⅡのグリーンを見せていただき
その自信はもろくも打ち砕かれた。

それを見せていただいた時思わず、「何だこれ」
「凄いですね。このグリーン。こんなの初めて見ましたよ。」
「よく手で撫でていたからね。」

同席していた方は、「えっ、それ黒じゃないの。」と。
確かに黒に見える程色合いは濃く、もの凄く艶があり、
完璧な程熟成していた。
オリジナルで造ってよかったと、つくづく思った。

そのFlickerⅡオリジナルグリーンをお借りして撮影したのが
今回ご覧いただく画像である。

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by fullhalter | 2011-09-16 11:53 | 皮革製品

FlickerⅠ

第一弾、第二弾では、SpankerⅠとⅡをご覧いただいた。
第三弾の今回はFlickerⅠで、次回はⅡをご覧いただく予定です。

SpankerとFlickerの違いはその形にあり、
私は、(前回も申し上げたが)Spankerの方が好きだ。
ともに、Ⅰの方はカードケースと小銭入れがついていて
Ⅱは小銭入れがなくカードケースがダブルでついている。

小銭を入れると型が崩れる可能性も高く、
私自身はSpankerⅡをはじめから使っている。

SpankerとFlickerの違いのもうひとつは幅である。
Spankerに比べFlickerの方が広く、札の出し入れが楽である。

SpankerⅡを使い始めた時は、
札を出す時ひっかかって直ぐに出せなかったことがあった。
使ってゆくうちに熟成し、表面の色が深く、艶で輝き始めた。
その頃になると札の出し入れもスムーズになり、
持つことの喜びと愛着が生まれていた。
WILDSWANS おそるべし。

質のよい原皮を選び、
丁寧な縫製で型崩れもなく、糸の綻びもなく、
私が全てのモノに求めている「熟成」も成し遂げてくれる。

だから、今でも親しくお付き合いいただいているし、
何よりもお求めいただいたお客様に満足いただいていて
フルハルターの信頼度にも繋がっているのだと思う。

SpankerⅠは借り物、
SpankerⅡは私が使っていたものと未使用品を並べて撮影した。

今回は、FlickerⅠの使用しているものをお借りすることが出来ず、
サドルプルアップ フルハルターオリジナル グリーンとワインの未使用をご覧いただきたい。

ただ、次回のFlickerⅡは
私が驚く程素敵に熟成したオリジナルグリーンをご覧いただくつもりなので
お楽しみに。

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フルハルターオリジナル サドルプルアップ グリーンとワインについては
これから製造することは不可能ですが、在庫があるものもございますので
お問い合わせください。
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by fullhalter | 2011-09-09 12:33 | 皮革製品

SpankerⅡ

ワイルドスワンズの財布の中でも私はSpankerが好きだ。
フルハルターで取り扱がはじまってまず
小銭入れのないSpankerⅡの黒を使った。

子どもの頃から憧れ、望んでいたサドルプルアップの
グリーンとワインをフルハルターオリジナルとして造ることが出来た時、
早速、オリジナルのグリーンに変えた。
私が使って熟成したSpankerⅡグリーンと未使用を比較してみてください。

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フルハルターオリジナルサドルプルアップのグリーン/ワインは
僅かですが在庫があります。
お問い合わせください。
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by fullhalter | 2011-09-02 13:03 | 皮革製品