フルハルター*心温まるモノ

カテゴリ:私の好きなもの( 30 )

化石 三葉虫

もう17年~18年前になるのだろうか?
初めてお目にかかったのは。

当時はまだ医師の仕事をされていたと思うが、仕事に一生懸命な方で誠に好もしい青年だった。
それから同じ国立大学医学部の研究室を選ばれ、邁進されてきたのだが、10年近く前にロンドンに移られ、研究職を続けられてきた。

一時帰国の時はわざわざ店を訪ねてくれる付き合いを続けさせていただいていたが、今年の8月に元の職場に戻られ、家族とともに帰国された。

9年間の空白で日本に馴染むのに時間がかかりそうだと…。
特に中学生の二人の姉弟は学校の考え方の違いに悩んでいる様子で、全くロンドンの状況を知らない私でも判るような気がする。
日本の学校では正解は一つのみだろうが、答えは複数ある筈である。


以前、何度か申し上げたが、表から見れば正しいことが裏から見れば間違い、つまり長所は見方を変えれば欠点にもなる。
二人の子供さんにはじっと耐えながら自分を貫いて欲しいと願っている。
過酷なことだとは判っているが、年寄りの願いである。

帰国に際し、忙しいにも関わらず、私への土産を懸命に探してくださり、5億年前のカンブリア紀の層から出土した化石「三葉虫」をくださった。
では、その化石をご覧ください。

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by fullhalter | 2016-11-18 13:11 | 私の好きなもの

Fugee 万年筆ケース

あの古山さんが藤井さんに鞄をオーダーしたのが、10年以上前だったと思う。
当初、古山さんのデッサンが藤井さんのイメージに伝わらず、何度か話し合い、藤井さんが、
「あ~、ゴジラの卵ね。」と言い、伝わったと聞いている。
その鞄は、左右に絵の道具入れと万年筆ケースが付いていて、万年筆ケースは金具で止める方式だった。

本来、革小物に金具が付いているものより全て革で出来ているものの方が好きな私だが、その万年筆ケースの金具がもの凄く気に入ってしまった。
いつの日にか同じものを造ってほしいと強く願って、「3工房合同展示会 Real Bespoke」の前だったと記憶しているが、思い切ってお願いした。
「あの古山さんのと同じ金具を使ってブライドルネイビーで、縦と横のバランスが一番良いのでは、と私が思っている4本差しを造ってください。」と。

実に素敵な、藤井さんの思いのこもった万年筆ケースになっていた。
では、ご覧になってみてください。

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他にも藤井さんの万年筆ケースは2種あるのでご覧ください。
初めは古山さんの著書、「カバンの達人」(枻(えい)出版社)で「森山さんの口金式棒屋根型ボストンバッグ」として載っている鞄を藤井さんに造っていただいた時、同じドイツカールフロイデンベルグの皮革で造って下さった3本差し。
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次に、ブライドル、焦茶で藤井さんのブログ、12月8日ダークな赤いステッチと同じダークな赤の糸を使っている(?)と思われる5本差し
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3本並べて。
4本差しが縦、横のバランスが一番良いのでは、と思っていたが、並べてみるとどれも良いことが判った。
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金具を使ったものとの違いはベロ(?)の厚さ。
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凄く斜めに針を差し込んだ縫い方で造られており、藤井さんの所で求めた私のグリーンのショルダーバッグと同じ縫い方。
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ここの真ん中の縫い方が大変だそうで、もの凄く短い針でペンチ(?)を使わないと縫えないと言う。
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by fullhalter | 2015-12-18 10:45 | 私の好きなもの

オルタス ペンケース



Fugeeさんのペンケースは既に持っていたので、是非小松さんにペンケースを造ってもらいたいと思っていた。
北欧の匠で求めたハンス・オスターが造ったペンケースに「フルハルター10周年記念万年筆」を入れて小松さんにお願いした。
製造途中で見せていただいた時、7mm位の皮革の輪を内側から縫い込んでつないであった。
その時は完成時の姿が私には思い浮かばなかったのだが、5月22日にご持参くださったその万年筆ケースは実に美しかった。

「表には一切縫い目がないんですよ。内側から縫い込んでコバ仕上げと同じ方法で仕上げました。楽しかったですよ。」
ハンス・オスターのペンケースからアイデアをいただいたのか定かではないが、その時から小松さんの「職人魂」に内なる炎が灯されたのだろう。
だからこそ、「楽しかったですよ。」という言葉になったのだと私は思っている。
「本物の職人、正真正銘の職人」。

Fugeeさんや小松さん、本物の職人の方々と親しくさせていただいていることが、私の人生を豊かにしてくれる。
では、その万年筆ケースをご覧ください。

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10周年の万年筆を入れて小松さんに渡したハンス・オスターのペンケース
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フルハルター10周年の万年筆を入れて
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更に小松さんが好きになったことがおこった。
私は子どもの頃から「マークは顔」だと思っていたが、大々的に表現するこのではなく、出来れば小さく、陰に隠すことが「粋」だと思っている。
小松さんに造っていただいた「20周年記念の鞄」もテッセンの花のマークがベルト(?)を外して開ける時に初めて見えるように造っていただいた。

万年筆ケースから10周年の万年筆を取り出したら、中からちっちゃな皮革が落ちた。
何と、それは「20周年記念のテッセンの花のマーク」ではないか。
「何故誰も気が付かない場所にマークを付けたのだろうか?」
皆そう思うだろう。
ブランドは殆どマークを大きく表に出しているし、それを使う人も心の満足を得ているのであろう。
私は全く反対で、隠れたところにマークを付ける小松さんの粋さと職人魂を見た思いで、益々好きになった。
中に隠れ、誰にも見えない小松さんだけの20周年マークをご覧ください。

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by fullhalter | 2014-06-06 15:33 | 私の好きなもの

Fugee弗入れ

小銭入れとしてワイルドスワンズの製造中止になった「Cactus」をずっと使ってきた。
ただ開けた時に小銭が落ちてしまう形なのでやや使いにくい感があり、今はパイロットの安い小銭入れを使っている。
長い間使い続けた為に皮革の疲労感がひどく、変えたいと思っていた矢先に、お客様が藤井さんに造っていただいたというカバの小銭入れを持っていて、見せてくれた。
以前から藤井さんが造るカバの何かが欲しかった私は、「これだ」と思い、注文した。

今年藤井さんからいただいた年賀状に「弗入れが出来ました。」とあったので、25日に要町の“Fugee”を訪ねた。
「フルハルター20周年のお祝いです。」と、テーブルに包装された包みが出された。
開けてみると、カバの弗入れだった。
「これ、注文したカバの小銭入れですよね。私の方からお願いしたものですからお支払させてください。」と申し上げたのだが、お祝いと言われて、引き下がってくれない。
恐縮しながらも、お受けすることにした。
では、“Fugee カバの小銭入れ”をご覧ください。

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次は、今使っているパイロットの小銭入れ
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2010年に「Fugeeのしごと 16点の鞄展」に私の鞄を出した時のお礼としていただいた「象のケース」。
私にとって最も大切な道具のひとつ、ルーペを入れて使っている。
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「やや使いにくい感あり」と申し上げた、我がワイルドスワンズの「Cactus」。
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小銭入れとして使い込んだナチュラルとライターケースとして使っているブラック。
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Fugeeさんに造っていただいた高価な原皮、象とカバを並べて。
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今回のカバの小銭入れに何を入れるか悩んでいる。
小銭入れとして使うにはあまりにも美しすぎるし、汚れるのは目に見えているので象のケース、黒のCactus同様、私にとって大切なものを入れたい。
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by fullhalter | 2014-01-31 13:47 | 私の好きなもの

インク瓶とルーペ

“鞄のFugee”についてはこのHPで何度となく申し上げてきました。
先日その藤井さんから電話があった。
「今、浅草なんだけど、少しだけおじゃましてもいい?」
あれ、今日は木曜でお休みの日なのに、と思いながら待っていた。

藤井さんと金原さんが一緒に来られ
「今日、タンナーさんとお会いする為、クレマチスの小松と一緒に浅草まで来たので。」ということだった。
「またフランスに行ったんだけど、何がいいのか判らなくてこんなものを土産に買ってきたんだけど。」と藤井さん。
更に金原さんは
「さあ、今日は“のみの市”で森山さんの土産を探そうと話して買ってきたものなのです。」と。
嬉しい、とても嬉しかった。
タイトなスケジュールの中であろうのに、私への土産を探す時間を作ってくれるなんて。
しかも何を選べばいいのかという悩みまで抱えて。

そんな思いでお二人が選んでくださったインク瓶とルーペです。
このルーペ、何とニブポイントを見るのにピッタリの倍率で、流石です。

これまでに何度も申し上げてきたが、私はコレクターではないのでいつの時代に造られたものか判らないのだが、1920~1950年代のモンブラン、ペリカンの製品たちと一緒に撮影してみた。
では、画像をご覧ください。

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by fullhalter | 2010-07-16 12:58 | 私の好きなもの

「Fugeeのしごと 番外編」

私のFugee鞄

“Fugeeのしごと 16点の鞄展”に展示する為に「私のFugee鞄」を藤井さんの工房に届けることになった。
前からFugeeさんを訪ねたいと言っていた友人のスケジュールとたまたま合って二人で伺った。
96年に開かれた“Fugeeの鞄展”にその友人が行ったことを藤井さんに言うと、
「え~、あの時にいらした方がいたなんて」と、もの凄く驚いていた。

以前にご来店されたお客様から
「藤井さんのところへ行ったんですが、小さなガッチリした鞄が展示されていましたよ。」と聞いていたので、そのことを藤井さんに伝えると
「これでしょ?」と壁にかかっていたグリーンのショルダーバッグを渡してくれた。
「ワインとグリーン、私の大好きな色じゃないですか。」
鳥肌が立った、神のお導きであり、縁である。
藤井さんは、
「この蛇腹のカメラのケース、金ちゃん(一緒に鞄造りをしている金原さん)の実家にあったものなんだけれど。ここの縫い方が良くて、いつかこういう造り方をしたい、と話していたんだ、その造り方をしたのがこの鞄なんだ。」
ワインの貴重な革と金具に心を打ち抜かれたのが前回。
今回もグリーンのベルギー産の革と、藤井さん、金原さんの思いに またまた射抜かれてしまった私。
怖い、恐ろしい、己との戦いに負けてしまった私。
だが、待てよ…、今でも何かあると家族から鞄を買ったことを言われるが、私の喜びとして受け入れてくれていることは判っている…、そこで一応
「帰って女房と相談しないといけないので」と言い、工房を後にした。
帰宅してそのことを告げると
「もう心は決まっているんでしょ。」と女房、同行した友人も後で
「腹は固まっていたよね。絶対に買うとあの時から思っていたよ。」と言った。

直ぐに買い求めたベルギー製皮革グリーン、「私のFugee鞄Ⅱ」の熟成を始めた。
家族には気持悪いと言われながら。
藤井さんたちが思いを込めて造られた鞄を 使い手が時間をかけて熟成させるのは当然のことだから。
手で撫でまわしても余り効果がなかったが、その時別の友人からブラッシングを勧められたことを思い出した。
驚いた!ベルギー産のこのグリーンの革はブラッシング効果てきめん。
ブラッシングすればする程濃くなり、深い艶が出て味わいが増す。
これからご覧いただく鞄は、
「使われたことが殆どないワイルドスワンズ ミニ六穴システム手帳」 「ワイルドスワンズ Trank グリージオの中に入れられた1.8㎜の厚さのござ目 スターリングシルバーのライター」 「ロングピース」 そして昼食用のトーストサンドがぴったり収まるサイズ、ジャストサイズの鞄である。
またまた藤井さんのお陰で、私の人生が豊かになった。
では、画像をご覧ください。

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この画像でお判りいただけると思うが
下半分がブラッシングされ深い艶と味わいが出ている。
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by fullhalter | 2010-06-04 13:27 | 私の好きなもの

「Fugeeのしごと 16点の鞄展」10

藤井さんから「私のFugee鞄」が出来上がったとの連絡があった。
私はまだ見ぬ我が子に会うような気持ちで渋谷の工房を訪ねた。

出来上がった鞄と対面した私といえば、年甲斐もなく茫然自失になったことをはっきりと記憶している。
外人のように喜びを素直に表し、ハグでもすればとも思うのだが、それを良しとしない自分が同居している私は、ただひたすらその喜びを隠してしまったように思う。
藤井さんも一緒に造られたお仲間の二人も 物足りない私の反応にガッカリされたことだろうと反省している。
後に聞いたことだが、金具は古いし、もう入手可能な原皮ゆえ何度も試作を重ねて出来上がったということ。
「私のFugee鞄」は、藤井さんとそのお仲間の思いと技術が凝縮した作品である。
「全てお任せします」とお願いした私に、「全て任せてもらって凄く嬉しかった」の言葉が全てを物語っていると思っている。

さて、自宅に持ち帰ってからの家族の反応が凄かった。
築40年近い我が家の4畳半に置いた。
そこへ帰宅した息子が、
「この部屋まで変わって見えるよ。鞄一つで部屋まで変えてしまう、あの藤井さんだからだよね。」と。

それからが大変だった。
この鞄の存在感に合う仕度が私にはない、どんな格好をしたらこの鞄を持ち歩けるだろうか。
しばらくは恐怖感すら感じていた。
よく訪ねてくれる友人たちに相談すると
「靴だよ。下はGパンでいいし、上は贈ったシャツがあるじゃない。」
そのシャツとは私の還暦の祝いとして銀座の老舗で造ってくれたもので、とても洒落ている。
サラリーマン時代は靴が大好きで、いつも手入れをして履いていた。
男のお洒落というより、身だしなみは靴だと以前から思っていた私だが、店を出してからは安いスニーカーばかりで革靴からすっかり遠ざかっていた。
友人たちに勧められるままに、新宿の伊勢丹に行ってみた。
靴もワインが好きなので、それを探したのだが、なかなか見つからなかった。
バーガンディのイギリス製グレンソンに目がとまり、買うことにした。

私は大分前から、65歳になったらまた革靴とツイードのジャケットをと思っていた。
歳とともに衰える容姿…、でも、その時にこそいいものを身につけたいと。
鞄のお陰で予定より3年早まることになったのだ。
グレンソンの靴に銀座老舗のオーダーシャツだと、自分でもFugee鞄が合うと思えた。
やっと恐怖感から解放された。
早速、その仕度で藤井さんの工房を訪ねた私に
「森山さん、格好いいよ。」
(それは私じゃなく、鞄と靴とシャツでしょ)と思いながらも、
「ありがとうございます。このシャツは贈り物で、私のイニシャルがここ(胸)に入っているんですよ。」

それ以来、革靴、ズボン、シャツ、ジャケットが増え、人生を変えてくれたと言ってもよい鞄。
今、それらと共に人生を楽しんでいる。
その原点が、今回もご覧いただく「私のFugee鞄」である。

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先々週申し上げたドイツの金具がついている鞄を持っている。
ドイツ “LeDer WOLF”のドクターバッグⅡで、10年余り前のこと。
同社のトートバッグを買うと言って女房がカタログを見せてくれ、一緒に載っていたドクターバッグⅠも共に購入した。
その鞄が結構気に入り、WEBで調べてもらい、求めたのがこれからご覧いただくドクターバッグⅡ。
「私のFugee鞄」と同サイズで、藤井さんに見せていただいた「これですらもう手に入らない」金具と同じものと思われるものが使われている鞄もご覧ください。

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次回も「私のFugee鞄」の番外編を予定しています。
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by fullhalter | 2010-05-28 11:48 | 私の好きなもの

「Fugeeのしごと 16点の鞄展」9

私のFugee鞄

藤井さんに初めてお会いした時の印象は「初めて会ったその日から」…そんな軽薄なものではないが、当たらずとも遠からず。
子供の頃から物造りが好きで、ただ「ひたすら」「ひたむき」に物を造る人が好きだった私にとって鞄職人、それも頑固な、と聞いていた藤井さんは穏やかな中に、ご自身の仕事には絶対妥協しない強さが感じられた。
その人柄にひと目ぼれだった。

このHPのどこかで既に申し上げた様な気がするが、ある日突然にあの古山画伯から電話があり、
「森山さん、藤井さん知っているよね。」
「ユーロボックスの藤井さんでしょ。」と私が言うと古山さんは
「違う、違う、鞄職人の藤井さん。」
「名前だけは聞いたことあるけど…。」
「今度うちでバーベキューパーティーやるんだけど、藤井さんも来るからおいでよ。あの人も職人で森山さんと同じ頑固で変人、変人同志合うと思うから来なよ。」
そんな予備知識を与えられて、お会いした時の印象が上記の通り。
頑固者同志だと、普通の穏やかな人に見えるのだろうか。

それ以来何度もお会いしていたが、その魅力は増すばかり。
ただ、怖くて店には一度も行ったことがなかった。
HPをご覧の多くの方々はお判りいただけると思うが、店に行って藤井作品を実際に見てみると、己の心と戦えず負けてしまう自信にみなぎっているのが自分で判るから。
私には藤井作品を求める財力も資格もない。
つまり、藤井さんが全精神を傾注して造りし鞄を持つ為の総合力が欠如していると、自分自身がよく判っていたからである。
一方では、いつの日か藤井さんの鞄を我が家の誰かに使って欲しいという願望はとても強かった。
使ってゆくうちにどんな風に変わり、味わいを深めてゆくのか、この目で確かめたかった。
常々そう思っていた私に、千載一遇の機会が。
2007年に大学を卒業する息子が居り、その記念に藤井さんの鞄を是非造ってやりたいと思った。
男の一生で、仕事を始める(就職)ということは最も大切な区切りであり、一生の中で自ら今後の人生の選択をすることであると思っていた私は、その記念に『Fugeeの鞄』と考え至ったのである。

2005年の秋頃だったと思うが、卒業まで一年半の期間があれば間に合わせてくれると思い、初めて店を訪ねた。
藤井さんは快く
「間に合わせますよ。」と言ってくれたので
「じゃ~今度息子を連れてきます。」と、ここで終わりになるシナリオだった。
だったのだが…、
「私、ワインとグリーンが好きなんですよ。」と言った私に
「森山さん、見るだけ見たら。これもう手に入らないドイツのタンナー カール・フロイデンベルグというところのワインなんだけどもの凄くいい皮革で、大好きなんだ。でも別の人から注文をもらっているから造れないんだけどね。」
その時、残念な思いと、安堵の思いが複雑に交錯した。

少し間があったが、一緒に働いている方が二階へ上がって行った。
そして下りて来るなり
「藤井さん、同じ皮革もう一枚ありますよ。」
何てことだ!私の心は見事に矢で射抜かれた。
(藤井さんも自身の在庫を把握していないのか…。俺と一緒じゃねぇ~か。)
私も大好きなモデルの在庫であっても把握していないことは当たり前で、商売人としては決定的に欠陥人。
更に親近感が増したと同時に、射抜かれた状態は続いている。
でも、まだ何とかこらえ続けていられたのだが…。

またまた一緒に働いている方が二階へ上がり、下りてきた時は何やら古い(汚い?)鞄をぶら下げていた。
(何なんだ?)
「そうそう、これフランス(?)に行った時の古い鞄で、この金具を使う為に買ってきたんだよね。今いい金具がないからこの金具いいでしょう。」
顔はほころび、目はキラキラと輝いている。
他の金具も見せてくれて
「この金具はドイツのものだけど、こんな金具でさえもう手に入らないんだよ。森山さんにだったらこの鞄の金具使うよ。いつでもいいから、とっておくから。」
更に、二の矢である。
この言葉は、完全に私の心を打ち抜いた。
「全てお任せします。お願いします。」

息子の就職記念『Fugeeの鞄』だった筈が…。
これが『私とFugeeの鞄』の縁である。

2005年12月21日
「いつになるか判らないけど、作品展をする時に展示させて欲しい」という言葉を添えてに藤井さんの手書きによるデッサン書きが届けられた。
その手書きのデザイン書が実に味わいのあるものと思う。
それがこれです。

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その鞄が“Fugeeのしごと 16点の鞄展”の16作目。
では、画像をご覧ください。

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引き続きこの鞄が出来上がってからのことを続ける予定です。
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by fullhalter | 2010-05-14 15:05 | 私の好きなもの

「Fugeeのしごと 16点の鞄展」8

今週の“Fugeeのしごと 16点の鞄展”は、第二回でご覧いただいた原皮と同じドイツの “カール・フロイデンベルグ”。
その時も申し上げたが、あの藤井さんをして「俺もこんな皮革を使えるようになったんだ。」と言わしめた皮革。
今回紹介する色はワイン。
このカール・フロイデンベルグ”のワインは私に深くかかわり、人生を変えた皮革である。
そのことは次回申し上げるつもり。

鞄と金具は切っても切り離せないもの。
万年筆に例えれば、本体とペン先。
本体が持ちにくければ、どんなにいいペン先がついていても書きやすくならない。
逆もまた真なり。

原皮が良くとも金具が悪ければいい味わいにはなれないし、逆もまた。
そして更に、ひとりひとりの好みで良い、悪いというより、好き、嫌いとなる。

鞄の金具は大量に使われるものではない為に、良い金具に巡り会うことが非常に困難な時代。
鞄造りをしている人々の悩みの種であろう。
流石と、皆さんも思われるだろうが、そんな状況の中藤井さんは自分が使いたい金具がなければ、「自分で造るしかない」と、金具まで手造りしている。
これぞ“藤井イズム”である。

藤井さんと初めてお会いしたのは、古山画伯の自宅の庭で開かれたバーベキューパーティー。
画伯の鞄コレクションを見せていただいた時に、「こんないい金具はもう手に入らないんだよね。この金具は凄く魅力的だ。」と言われた。
その言葉が今でも脳裏に焼き付いている。

今回のドイツ “カール・フロイデンベルグ”/ワイン ボストンの金具は藤井さんの手で造られたもの。
そんな視点でじっくり見て欲しい。

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次回は、“Fugeeのしごと 16点の鞄展”の16作目。
私の鞄です。
その鞄を注文した経緯と、出来あがってから私の人生を変えてしまったことを詳しく申し上げるつもりです。
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by fullhalter | 2010-04-30 14:30 | 私の好きなもの

「Fugeeのしごと 16点の鞄展」7

藤井さんのお店で「カバ」の原皮を見た時、とても魅力的だった。
息子たちの目にも同じように映ったようである。

2006年、古山浩一画伯著 『万年筆の達人』出版記念パーティーの会場で、藤井さんとそのスタップだった小松さん(現在は銀座で鞄、靴の製造販売 “クレマチス”の共同経営者)に向かって私は
「カバ、いいですね。何かズタ袋的な鞄に合いますよね。」と、言ってしまった。
それに対してお二人は、
(何言っているんだ。あんな貴重な、高価な味わいのある皮革をズタ袋だと。)と思っているように見えた。
思い過ぎかもしれないが。

今でも鞄を見た時、私にはそれがどんな種類に属するのか、何と呼ばれているのか判らない。
(アタッシュ、ボストン、ブリーフ、トート、ドクター等々…。)
カバの皮革の風合い、味わいから、ガッチリと造られた鞄よりもやわらかい形の方が絶対似合う、と思っている。
何と呼んで良いのか判らない私は、それを「ズタ袋」と言ってしまった訳で、専門家や鞄をよく知っている方からすれば、違和感を感じる言葉だったかもしれない。
カバ=ズタ袋として、今でも私の心の中に残っている。

今週はそのカバの鞄である。
これからご覧いただく2点の鞄は、今の私にとってもやはり、ズタ袋的な種類に入るものである。
画像をご覧になれば、私の無知さや、表現力の乏しさがお判りいただけると思う。

1点目は、和服に会わせる為のバッグで、依頼主は必ずどこかに亀甲模様を入れて欲しいと要望されるそうだ。

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2点目は2006年12月 枻(えい)出版社「Real Design 6」に Fugeeのお散歩バッグとして紹介されている。
以前に藤井さんの紹介でいらしたお客様が、ある日また来られた時に肩から下がっていてびっくりした。
「あれ、そのバッグ藤井さんのページに載っていたカバの…。」
「どうぞ、見てあげてください。」
そんな経緯のバッグです。

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作品展の作品も残りは2作。
来週は、ドイツ カール フロイデンベルクのボックスカーフ/ワインのボストンバッグです。
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by fullhalter | 2010-04-23 14:17 | 私の好きなもの