人気ブログランキング | 話題のタグを見る

フルハルター*心温まるモノ

Noodler's Ink (碧)

ここ数年,万年筆の価格がヨーロッパを中心として何回か上がっている。アウロラは先日上がったばかりだし,モンブランはここ数年だけで2回も変わった。つい最近までMontblanc 149が5,9000円だったのに今や71,000円になってしまった。ユーロの価格統一の便乗か,それともいよいよ万年筆を使う人が減ってきているのか? そんな中で,アメリカのインク業界では新しいインクが次々と誕生している。先日碧のページ「Private Reserve Inkとブレンド」で報告したPrivate Reserveがそのいい例だが,またアメリカより新たなインクが誕生したようだ。その名を「Noodler's Ink」という。まだ日本では出回っていないが,今回森山さんを通じて何本か手に入ったので碧のページにて紹介したい。

Noodler\'s Ink (碧)_e0200879_9133227.jpg


Noodler's Inkは,アメリカのウイルス感染者(万年筆愛好家)のネイザン・ターディフという男が自分の気に入った色のインクがないことや,新聞に掲載されているクロスワード・パズルに書き込むのに染みが広がらないような万年筆インクがないことから,自分でインクを作ってしまった。これが始まりである。そして細々と趣味で売り始めたら,あまりにも好評になってしまったため一人でインクを作って販売するのは無理という事態になり,アメリカのある代理店が協力してインクの販売に乗り出し,現在約40種類のインクを出すところまでに至っている。黒とリーガルラピスという青がパーマネントインク(耐水性)で,その他に染料系の36色余りの色が現在あるそうだ。

さて,Noodler'sという名前の由来は瓶のマスコットになっているナマズから来ている。 アメリカではナマズを食用に養殖しているが,日本のナマズとは違って,アメリカのナマズは体長1mを越す大物が多い。この大型の野生のナマズを取る方法がまた変わっている。ナマズがいる湖に裸になって入り,岸沿いの浅瀬などを腹ばいで動き回りながら岸や岩の水面下の穴に自分の腕を奥まで差し入れる。もし穴にナマズがいれば,ナマズは怒って突っ込まれて来た腕を,コブシから肘の辺りまでガップリと咥えこむらしい。こうして自分の腕に噛み付いたナマズをひっぱり出して捕まえる連中をNoodlersと呼ぶのだそうだ。

Noodler's Inkを開発したネイザン・ターディフはこのNoodlersであるらしい。ナマズには歯はないとはいえ,1日やっていると,腕は真っ赤に腫れるというからなんとも野蛮な?何とも逞しいカーボウイどものナマズ漁か!。Noodler's のインクのラベルにナマズの絵が書いてあるのはこういう理由からであり,これが名前の由来だそうだ。初期に購入したインクは,瓶のままだったが,現在瓶を入れる箱が用意されたらしい。なんと箱の外装にはナマズとカーボウイブーツ,そしてヌードラーらしき人間が描かれているという。 この変わり者のアメリカのウイルス感染者(万年筆愛好家)のネイザン・ターディフという男は,今現在白いインクを開発している最中だという。基本的にわがインク研究会のメンバーと同じような人間らしい。

Noodler\'s Ink (碧)_e0200879_9144826.jpg


さて,それでは私の手元に入った6本のNoodler's Inkインクをご紹介しよう。 上から順に,「Gruene Cactus」「SEQUOIA Green」「Army Green」「SQUETEAGUE」「YELLOW」「WALNUT」の6色である。 「Gruene Cactus」はサボテンの一種らしく,インク自体の色は明るいグリーン。一番近いものとしてはSailorのグリーンといったところか。「SEQUOIA Green」のSEQUOIAは「セコイア」というアメリカ西部産のスギ科の常緑高木の名前で,わが「お茶葉グリーン」とよく似た色合いである。「Army Green」は名前そのままの色で,アメリカ陸軍兵士の軍服の色。SailorのイエローグリーンとPrivate Reserveのアボガードの中間ぐらいだ。「SQUETEAGUE」はアメリカにいる魚の一種だそうで,weakfishという(大西洋で捕れる)ニベ科の魚の別名だそうです。よくわからないが,グリーンがかった青というより,青みがかったグリーン。「YELLOW」は見たまんまの鮮やかな黄色。最後に「WALNUT」はクルミだからクルミ色の茶色である。Sailorのブラウンより黒っぽく,Watermanのハバナより青味がある。またオマスのセピアより緑っぽい。渋みのある茶色である。 現在手に入ったばかりで,フローや書き味はまだご報告できないが,Private Reserveのときと同様,アメリカ産のインクは色彩が鮮やかなものが多く,はっきりしている。対してヨーロッパ産のインクは深みと重厚さを大切にしているようだ(ただ今,我がインク研究会のKingsblue殿がNoodler's Inkを使っていろいろと遊んでいるのでそのうち報告されるかも知れない。このおじさんもネイザン・ターディフに負けず劣らず変なおじさんだ)。

さてさて,変わり者の変なおじさん。勇壮なNoodlersのことを報告しましたが,何とも人ごとでないような気がしてしかたない?だから応援したい。頑張れNoodler's Ink,そして頑張れネイザン・ターディフ。いつか我がインク研究会の面々とインク談義をしようではないか(笑)。ということでNoodler's Inkに乾杯!!


+++ 碧の広場 +++
インク研究会のホームページを開設してから早や5カ月が過ぎようとしている(碧ちゃんは嬉しい!)。なんだかんだといいながら結構会員達では情報交換ができ,非常に有意義に進んでいるが,読んでいる方々はいかがであろうかと?ふと疑問に思うことがある。 そんな折り読者の方より貴重な情報をいただいたのでここにご紹介したい。 第7回目の報告で碧のページでは,「こだわりのGreen」としてフルハルターのグリーンを目指してブレンドグリーンを作成したことを紹介させていただいたが,同じようなことをしていた方がいたのである(超感激である!)。この方はConway Stewart のインクでグリーン2,ブラウン 1,オレンジ1の割合で同じような色合いのグリーンを作っていたということである。皆さんもフルハルターのグリーンを超えるグリーンを作ろう。

Noodler\'s Ink (碧)_e0200879_916487.jpg


また,お手紙では混ぜたインクをスポイトを使って,使用済みのカートリッジに入れるというユニークな方法を採用しているとのことですが,確かにこの方法だとカートリッジ式の万年筆にもブレンドインクを使用できるという利点がある。なかなかのウイルス感染者である。 我々は面倒なので注射器を使用しております。特にガラスの注射器は最高に便利です。プラスチックの注射器やプラスチックのスポイトはインクを洗い落とすのが結構大変ですが,ガラスだといとも簡単に洗い落とせるし,注射器の先端に針を着けると,非常に細かい量の調合・調整もできるのです。私はモンブラン・モーツアルトのカートリッジにこの注射器を使ってブレンドインクを入れています。いかがでしょうか?なかなかの優れものですよ。またインク研究会の面々は全員注射器を持っています(ちょっと異常な風景で怖いという人もいますが……。フルハルターの店の奥では森山さんが大きな注射器を持ってインクを別の容器に移している風景がよく見られます。このような注射器の使い方を考案したのも森山さんです,結構危険な人なんです)。 最後に,お手紙有り難うございました。
by fullhalter | 2004-08-20 09:12 | インク研究会