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フルハルター*心温まるモノ

「Fugeeのしごと 16点の鞄展」10

藤井さんから「私のFugee鞄」が出来上がったとの連絡があった。
私はまだ見ぬ我が子に会うような気持ちで渋谷の工房を訪ねた。

出来上がった鞄と対面した私といえば、年甲斐もなく茫然自失になったことをはっきりと記憶している。
外人のように喜びを素直に表し、ハグでもすればとも思うのだが、それを良しとしない自分が同居している私は、ただひたすらその喜びを隠してしまったように思う。
藤井さんも一緒に造られたお仲間の二人も 物足りない私の反応にガッカリされたことだろうと反省している。
後に聞いたことだが、金具は古いし、もう入手可能な原皮ゆえ何度も試作を重ねて出来上がったということ。
「私のFugee鞄」は、藤井さんとそのお仲間の思いと技術が凝縮した作品である。
「全てお任せします」とお願いした私に、「全て任せてもらって凄く嬉しかった」の言葉が全てを物語っていると思っている。

さて、自宅に持ち帰ってからの家族の反応が凄かった。
築40年近い我が家の4畳半に置いた。
そこへ帰宅した息子が、
「この部屋まで変わって見えるよ。鞄一つで部屋まで変えてしまう、あの藤井さんだからだよね。」と。

それからが大変だった。
この鞄の存在感に合う仕度が私にはない、どんな格好をしたらこの鞄を持ち歩けるだろうか。
しばらくは恐怖感すら感じていた。
よく訪ねてくれる友人たちに相談すると
「靴だよ。下はGパンでいいし、上は贈ったシャツがあるじゃない。」
そのシャツとは私の還暦の祝いとして銀座の老舗で造ってくれたもので、とても洒落ている。
サラリーマン時代は靴が大好きで、いつも手入れをして履いていた。
男のお洒落というより、身だしなみは靴だと以前から思っていた私だが、店を出してからは安いスニーカーばかりで革靴からすっかり遠ざかっていた。
友人たちに勧められるままに、新宿の伊勢丹に行ってみた。
靴もワインが好きなので、それを探したのだが、なかなか見つからなかった。
バーガンディのイギリス製グレンソンに目がとまり、買うことにした。

私は大分前から、65歳になったらまた革靴とツイードのジャケットをと思っていた。
歳とともに衰える容姿…、でも、その時にこそいいものを身につけたいと。
鞄のお陰で予定より3年早まることになったのだ。
グレンソンの靴に銀座老舗のオーダーシャツだと、自分でもFugee鞄が合うと思えた。
やっと恐怖感から解放された。
早速、その仕度で藤井さんの工房を訪ねた私に
「森山さん、格好いいよ。」
(それは私じゃなく、鞄と靴とシャツでしょ)と思いながらも、
「ありがとうございます。このシャツは贈り物で、私のイニシャルがここ(胸)に入っているんですよ。」

それ以来、革靴、ズボン、シャツ、ジャケットが増え、人生を変えてくれたと言ってもよい鞄。
今、それらと共に人生を楽しんでいる。
その原点が、今回もご覧いただく「私のFugee鞄」である。

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先々週申し上げたドイツの金具がついている鞄を持っている。
ドイツ “LeDer WOLF”のドクターバッグⅡで、10年余り前のこと。
同社のトートバッグを買うと言って女房がカタログを見せてくれ、一緒に載っていたドクターバッグⅠも共に購入した。
その鞄が結構気に入り、WEBで調べてもらい、求めたのがこれからご覧いただくドクターバッグⅡ。
「私のFugee鞄」と同サイズで、藤井さんに見せていただいた「これですらもう手に入らない」金具と同じものと思われるものが使われている鞄もご覧ください。

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次回も「私のFugee鞄」の番外編を予定しています。
by fullhalter | 2010-05-28 11:48 | 私の好きなもの