フルハルター*心温まるモノ

第三十一話 万年筆の選び方について

  私は1977年4月に「万年筆」の世界に足を踏み入れた。
当時のモンブラン輸入元、ダイヤ産業 修理課に。
その2年後には品質管理、検品が発足し、モンブラン社との技術討議や検品データ、修理データの提出等々の責任者として16年と数ヶ月。
1993年8月末に退社し、その年の10月末に「フルハルター」を開業した。
これが私の「万年筆」に対する経歴である。

  モンブラン勤務時代の16年と数ヶ月も含めると この32年間で、何万人という「万年筆の使い手」の方々とお目にかかった筈である。

  その多くの方々から教えられたことは
1.万年筆の持ち方、持つ位置、筆圧、筆記角度はそれぞれ人によって違うこと。
2.どんなボディバランスを持ちやすいと思うか。
3.どんな太さのペン先が良いと思うか。
4.どんな書き味を良しと思うか。
それぞれの使い手によって、何を「いい万年筆」と判断するか、これが全く違うということである。
そして、自分が好むものが、「絶対」になる。

  それは、当たり前のこと。
今はよく食べ物になぞらえる。
皆、それぞれ自分が食べて、旨いと思うか、感じるかが違うように、どの万年筆を持って持ちやすい、どの万年筆を書いて書きやすい、と思うかは、その人によって違う。
このことを使う人々から身に沁みて教えられた。
32年間に何万人もの方々から教えていただき、育てられた、万年筆に対する私の「基本的立場」である。
お判りいただけるだろうか…。

  「お勧めの万年筆は何か、アドバイスして欲しい。」というメールをいただくことがある。
専門家である私を信頼してのことであり、有り難いと思う反面、私の基本的な立場から、お会いしない方が何をもって持ちやすい、書きやすい、と感じるか判らずにアドバイスなど出来る筈もなく、
「ご自身で万年筆を扱う店に行かれて、実際に試し書きをしていいと思ったものをお求めください。」と申しあげる。

  アドバイスを求めたいという気持ちが判らない訳ではないが、私のアドバイスは、
「あなたの好きなものは、あなたしか判りませんよね。」と、返事を待っていた方にとってはたぶん、冷たいと感じる言葉をお返しするしかないのだ。
お会いしたこともない方に対し、いい加減なことは言えないというのが、私の正直な気持ちなのだが、どうもそのことがご理解いただけないらしく、言葉とは難しいものだと悩む。
直接お会いすれば、店のサンプルを試していただいて、感想をお聴きしながら、じっくりアドバイスすることが可能なのだが。

  そのようなご質問と、「ハードルが高くて…」という声に対し、改めてここで述べてみることにしたのです。
私の万年筆に対する基本的な立場は申し上げた通り、気楽にご相談にいらしてくだされば嬉しいです。

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by fullhalter | 2009-05-01 15:34 | 私と万年筆