フルハルター*心温まるモノ

象牙印籠『巻狩蒔絵』

先週は長い間の私の念願、「川蝉蒔絵」、しかも素材も大好きな「黒柿」をご覧いただいた。
十年前に川蝉の蒔絵を見てからというもの、いつの日か実現したいと願っていた。
黒柿の印籠、「蟻と蟋蟀」を見た時に、これだ、と思った。
先週も申し上げたが、その当時夢舟さんが持っていた他の二つの素材は鉄錆び塗りをしたものと、黒柿のそのままのものだった。
私は黒柿の木目が好きで、そのままのものに、念願の「川蝉」を描いてもらうことにした。

夢舟さんは大変忙しい方、だから私がお願いしているものは、なかなかという状況である。
急ぐものではないので、全く問題はないが。
ある時、夢舟さんから
「遅くなったのですが、森山さんからお願いされているもの描きます。どれを先にしましょうか。」
と連絡をいただいた。
即、「黒柿川蝉」と答えて出来た作品を、先週ご覧いただいた。
「黒柿川蝉」が私の手元に届き、お礼の電話をしたところ、「象牙の印籠」も出来上がっているとのことで、直ぐに送ってもらうことにした。

いや~びっくりした。
念願の「黒柿川蝉」に大満足していた私は、正直ショックだった。
一瞬だが、その大満足が霞んだ。
「すげ~、ものすげ~。」
息が止まった、鳥肌が立った。
そのくらい凄い作品である。
今時間が経って冷静に考えてみると、小さい頃から象牙が一番好きな素材であり、蒔絵が一番好きな職人の仕事である私には、当然の結果。
時計の文字盤でさえ、ずっとアイボリー色を望んでいる私が、とうとう本物の「象牙に蒔絵」に、出会ってしまったのだ。
完全に心を打ち抜かれた。
今、「黒柿川蝉」に申し訳ないような気持ちでいっぱいである。
でも、偽らざる心であるから、それも仕方ない。
それにしても、象牙っていい、また、蒔絵が凄くいい。
欲しい~と思うが、無理。
川蝉の4倍もするのだから。
でも、いつか誰かが自分のものにするのだろう。
「ちきしょう」という気持ちと同時に、これを手にした人は、幸せな人だと思う。
画像でこの素材の奥深さ、夢舟さんの心と技が伝わるのか自信はないが、どうぞご覧になってください。
では、作者の言葉から。

【 作者の言葉 】
鹿狩している一瞬を描いた物です。
わたしは、今時計文字盤にも蒔絵をすることがありますがそのときにはすべて顕微鏡をつかいながらの作業になりますが、この印籠の時にも全てではありませんが、顕微鏡を使いながらの作業でとても神経の使う仕事でした。
象牙に蒔絵をすることはとても難しく普通の器物に蒔絵をするよりも何倍も作業の工程が多く大変でした。
また根付は手彫りでお多福を彫り色漆を塗り仕上げた物で緒〆は人物の着物の色に合わせた翡翠を使いました。


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左:根付  右:緒〆
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先週の「黒柿川蝉」と
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30年位前に、叔父に貰った蒔絵印籠と象牙の根付。
印籠に興味を持たせてくれたきっかけとなった作品。
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by fullhalter | 2009-02-20 11:06 | 夢舟の作品達